環境省「SHIFT事業」支援機関の公募開始 カーボンクレジット創出へMRV体制を強化

村山 大翔

村山 大翔

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一般財団法人省エネルギーセンター(ECCJ)は2026年2月9日、環境省の委託を受け、「脱炭素技術等による工場・事業場の省CO2化加速事業(SHIFT事業)」における「支援機関」の公募を開始した。

本事業は、中小企業等の工場における設備更新やDX化を支援し、2050年のカーボンニュートラル実現に向けた排出削減を加速させることを目的としている。今回の公募は、事業者の脱炭素化を実務面から支える専門機関を募るものであり、国内のカーボンクレジット市場における「削減の質」を担保する重要な一石となる。

予算規模と支援の柱、DXによる削減の「見える化」を促進

令和8年度(2026年度)予算案として5,786百万円が計上された本事業は、主に2つの補助メニューで構成される。

  1. 省CO2型システムへの改修支援
    電化や燃料転換等により、工場単位で15%以上、または系統単位で30%以上のCO2削減を目指す事業に対し、最大5億円を補助する。
  2. DX型CO2削減対策実行支援
    DXシステムを用いた設備運用の改善に対し、最大200万円を補助する。

特に注目すべきは、後者のDX型支援である。支援機関は、運転管理データに基づく効果的な改修設計や、即効性のある運用改善を伴走支援する役割を担う。

カーボンクレジット市場への影響、MRV基盤としてのSHIFT事業

本事業の意義は、単なる設備投資の補助に留まらない。カーボンクレジットの創出において最大の障壁となるのが、信頼性の高いMRV(計測・報告・検証)体制の構築である。

SHIFT事業では、CO2排出量を毎年度モニタリングし、削減効果を「見える化」することが義務付けられている 。支援機関が介在することで、データに基づいた適正な設備容量の策定や運用改善が可能となり、創出される削減量の透明性が飛躍的に向上する 。これは、将来的に中小企業が創出した削減価値を高品質なカーボンクレジットとして国際市場や国内取引に供給するための、不可欠なインフラ整備といえる。

公募の経緯と今後の展望

環境省は地球温暖化対策計画に基づき、2030年度および2050年の目標達成に向けて、積極的な省CO2投資を後押ししてきた。令和7年度補正予算でも3,500百万円が確保されており、年度を跨いだ継続的な支援体制が敷かれている。

今回の支援機関公募は2026年3月2日まで実施され、登録された機関はSHIFT事業以外のサポートを必要とする事業者への紹介対象にもなり得る。脱炭素化への課題分析から解決手法の検討まで、工場・事業場の脱炭素化普及を牽引する専門集団としての役割が期待されている。

本事業における「支援機関」の役割は、事実上の「カーボン・アドバイザー」である。

中小企業にとって、複雑化する脱炭素技術やカーボンクレジット創出のプロセスを自社のみで完結させることは困難だ。支援機関がDXを武器にMRVを代行・指導する体制が整えば、日本国内の潜在的な削減ポテンシャルが「カーボンクレジット」という名の金融資産に変わるスピードは一段と加速するだろう。

参考:https://www.eccj.or.jp/shift07/index.html