川崎重工業は11月12日、独自のCO2分離回収技術「Kawasaki CO₂ Capture(KCC)」を適用した商用ベースの実証設備を、兵庫県神戸市の神戸工場に完成させたと発表した。大気から直接CO2を回収する直接空気回収(DAC)設備と、発電所排ガスからCO2を分離するポスト・コンバスチョン・キャプチャー(PCC)設備の2種類で構成され、両方式を同一敷地内で同時に実証するのは国内初となる。
KCCは、同社が潜水艦や宇宙ステーション向けに開発してきたCO2除去技術を応用したもので、アミン系吸着剤を用いた省エネルギー型の回収方式を採用している。一般的な回収プロセスよりも低い60℃でCO2を脱離でき、工場内の未利用熱を活用することで、エネルギー効率の向上と環境負荷の低減を実現する。
神戸工場内に設置されたDAC設備は、将来の大規模展開を見据えたモジュール構造を採用し、1モジュール当たり年間100〜200トンのCO2を回収できる。PCC設備は、同工場の自家発電用高効率ガスエンジンから排出される低濃度CO2を対象に、年間360トンを回収する能力を持つ。KCCを分散型ガス発電に適用するのは今回が初めてであり、工場や地域熱供給システムなど多様な排出源への横展開が期待される。
川崎重工はこれまで、京都府舞鶴市および米国ワイオミング州の石炭火力発電所でKCC技術の実証を進めてきた。今回の神戸設備はそれらの成果を反映したものであり、同社は「技術改良と社会実装を進めることで、CO2回収量を拡大し、地域および産業界の脱炭素化に貢献する」としている。
国際エネルギー機関(IEA)は「Net Zero by 2050」ロードマップで、PCCを既存インフラを活用した即効性のある排出削減手段、DACをネガティブエミッション達成に不可欠な技術と位置づけている。川崎重工のKCC実証は、これら両分野を同時に推進する試みとして、国内外のカーボンリサイクル戦略において注目される位置付けとなる。
同社は今後、神戸設備を中心にCO2分離回収事業の商用展開を加速させ、2020年代後半にかけてスケールアップや海外展開も視野に入れている。
参考:https://www.khi.co.jp/pressrelease/detail/20251112_1.html
