全国初の「農×森」連携協定が締結 神奈川県域J-クレジットを地産地消へ

村山 大翔

村山 大翔

「全国初の「農×森」連携協定が締結 神奈川県域J-クレジットを地産地消へ」のアイキャッチ画像

神奈川県信用農業協同組合連合会(JA神奈川県信連)、神奈川県森林組合連合会(神奈川県森連)、全国森林組合連合会(全森連)、および農林中央金庫は2026年2月9日、森林由来J-クレジットの創出と利活用に関する連携協定を締結した。

県域の農業系および森林系協同組合組織が直接連携し、森林由来カーボンクレジットを取引する枠組みは全国初の事例となる。本協定に基づき、神奈川県森連が箱根・湯河原地区で創出するカーボnクレジットをJA神奈川県信連が購入し、地域内での資金循環と脱炭素化を同時に推進する。

今回の協定の核となるのは、神奈川県森連がプロジェクト実施者として自ら創出する「森林経営活動(FO-001)」によるJ-クレジットである。対象となるのは箱根町および湯河原町の森林148.78ヘクタールで、今後16年間で5,394〜8,959t-CO2の吸収量を見込んでいる。

森林組合連合会(森連)が県域組織として自ら森林経営計画を策定し、カーボンクレジット創出を主導する点において画期的な試みといえる。JA神奈川県信連は、購入したカーボンクレジットを自組織の事業活動から排出される温室効果ガス(GHG)のカーボンオフセットに充てる方針だ。

神奈川県は2007年度(平成19年度)から「水源環境保全税」を導入するなど、官民一体となった水源林の保全に注力してきた経緯がある。森林は農業に不可欠な「良質な水」を育む機能を有しており、適切な森林整備が滞れば、水質悪化や土砂流出を通じて農業の持続性に甚大な影響を及ぼす。

本プロジェクトによるカーボンクレジットの売却益は、そのまま箱根・湯河原地区の森林整備費用に還元される。これにより、これまでの公的資金に頼るだけでなく、民間資金を森林管理に呼び込む新たな「地産地消型」の環境投資モデルが構築された。

今後は、全森連や農林中央金庫が後援となり、J-クレジットを活用した新たな金融商品の開発も検討される。これは、森林所有者と地元企業、さらには農業者を結びつける、地域に根ざしたカーボンファイナンスの先駆けとなる可能性がある。

今回の「農×森」連携は、単なるCO2削減に留まらず、農業の生命線である「水」を守るための経済合理性を持たせた点が極めて巧妙である。

特に、県域組織が自らカーボンクレジットを創出・購入する内製化モデルは、外部のブローカーにマージンを流出させず、地域内に資金を滞留させる。

これはカーボンクレジットの「品質(共益性)」を重視する昨今のトレンドにも合致しており、他都道府県のJAや森林組合にとっても、模倣すべき成功事例となるだろう。

参考:https://www.kenmoriren.jp/wp-content/uploads/2026/02/f970fc042a721c5649f77db845d62340.pdf