JPX総研、「生成AI×クラウド」で市場情報基盤を強化 カーボンクレジット市場のデジタル連携を加速

村山 大翔

村山 大翔

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日本取引所グループ(JPX)の子会社であるJPX総研は11月5日、アマゾン ウェブ サービス(AWS)の支援を受け、「グローバルな総合金融・情報プラットフォーム」の実現に向けた取り組みを強化すると発表した。今回の発表では、生成AIを活用した企業情報開示支援機能の実装や、カーボンクレジット市場システムの開発など、JPXのデジタル戦略の中心となる具体策が示された。

データ基盤をAWSに移行 市場の信頼性とレジリエンスを強化

JPX総研は、JPX共通のデータ基盤「J-WS」をAWSクラウド上で運用し、金融情報サービスの安定性と拡張性を確保している。新たに、企業の適時開示情報を処理する「TDnet」システムもJ-WSに移行することで、データ処理の信頼性とサイバーセキュリティを強化する。

AWSの東京・大阪両リージョンを活用することで、災害時にも事業継続性を確保する冗長構成を実現した。これにより、JPXは市場インフラとしての「耐障害性」「公平性」を高めるとともに、海外投資家のアクセス環境も改善する。

生成AIが開示業務を支援 脱炭素情報の透明化にも寄与

JPX総研は、富士通と協働でTDnetの更改を進める一方、AWSの生成AIを活用した開示資料作成支援機能を開発している。この新機能により、上場企業のESG関連情報やカーボン・クレジット取引の開示が効率化され、非財務情報の透明性向上が期待される。

また、上場企業と取引所を直接つなぐ専用プラットフォームを通じ、脱炭素関連データを含む情報の安全な共有・分析を可能とする。これにより、企業の温室効果ガス削減実績やクレジット創出プロジェクトの開示精度が向上する見込みだ。

カーボンクレジット市場システムを共同開発 日立と連携

AWSの技術支援を受けたデジタル開発体制の成果として、JPX総研は日立製作所と協力し「カーボンクレジット市場システム」を構築した。この新市場は、排出削減量や除去量を取引可能なデジタル証書として管理する仕組みであり、国内外のカーボンオフセット需要に対応する基盤となる。

同システムは、環境省主導のJ-クレジット制度などとの相互接続も視野に入れ、企業の脱炭素経営を支える金融インフラとして期待されている。

JPXデータプラットフォーム「J-LAKE」 生成AIで投資判断を支援

JPX総研は、AI分析基盤「J-LAKE」を中心に、市場データとESG情報を一元管理する仕組みを整備している。証券データポータル「JPxData Portal」では、生成AIを活用した新機能が実装され、投資家が非財務情報やカーボン関連の開示資料を容易に検索・分析できるようになった。

この統合データ環境により、金融機関やスタートアップが脱炭素関連データを活用した新サービスを共創するエコシステムの形成が加速している。

「Target2030」ビジョンの中核に AWSとの協働を深化

JPX総研の二木聡社長は、「JPXグループはAWSとの連携により複数の新システムを構築し、データ・デジタル事業を牽引してきた。今後もAWSという強力なパートナーとともに、グローバルな金融情報プラットフォームの実現を加速させる」と述べた。

AWSのグローバル金融事業責任者スコット・マリンズ氏も、「TDnet移行を通じて、JPXは市場アクセス性と透明性を高め、生成AIや機械学習による新たな価値提供を実現している」と評価した。

JPXは、今後もAWSとの長期的協働を通じて、カーボンクレジット取引を含む持続可能な金融市場の発展を支える方針である。

参考:https://www.jpx.co.jp/corporate/news/news-releases/0060/20251105-01.html