三菱総合研究所(MRI)は10月24日、経済産業省による令和7年度「二国間クレジット取得等のためのインフラ整備調査事業(JCM実現可能性調査)」に採択されたと発表した。国際エネルギー企業bpの日本法人bpジャパンと共同で、インドネシア・パプア州の「Tangguh CCUS」プロジェクトを対象に、複数の排出源を想定した炭素回収・利用・貯留(CCUS)事業の方法論構築を行う。日本とインドネシアの二国間クレジット制度(CM)におけるCCUSの制度的・技術的基盤整備を目的とする。
JCM制度下でのCCUSクレジット化を想定
JCMは、日本と協定国が協働して温室効果ガス(GHG)削減効果をクレジット化する国際的な枠組みで、2013年に日本とインドネシアが協定を締結。再生可能エネルギーや省エネ分野での共同事業を展開してきた。2024年12月にジャカルタで開催された第10回合同委員会では、CCS/CCUSを対象とする新たなガイドラインが採択され、CO2貯留・利用による削減効果をJCMクレジットとして認証可能とする制度設計の議論が進展している。
この流れを受け、MRIとbpは、bpが推進するTangguh CCUSプロジェクトの拡張フェーズを対象に、複数の排出源から回収されるCO2を統合的に処理する仕組みを想定した方法論を構築する。これにより、JCM制度下でのCCUS導入を制度的に裏づける技術的枠組みの策定を目指す。
国際整合性のあるカーボンアカウンティングを検討
本調査においてMRIは、JCM制度に適用可能なCCUS方法論案の構築を担当し、国際的な整合性をもつカーボンアカウンティングおよび測定・報告・検証(MRV)手法を検討する。一方、bpはTangguh CCUSで得た技術的知見を提供し、JCM実施計画の策定を担う。
主な作業項目には、
・CCUSを対象とするJCM方法論の立案
・CO2回収・輸送・貯留に関する制度・市場調査
・GHG削減量の推定およびMRV手法の設計
・インドネシア政府・関係事業者との協議
が含まれる。
複数産業でのCO2削減展開を視野に
調査結果は、インドネシア国内での複数排出源対応型CCUSの制度設計に資する基礎資料として活用される予定である。MRIは、今回の成果が「CCUSの社会実装に向けた制度的・技術的要件の整理につながる」としており、JCMクレジットの認証対象拡大を通じて、アジア地域での大規模脱炭素化の促進を目指す。
インドネシア政府は2060年のネットゼロ達成を掲げており、日本政府も2050年カーボンニュートラルを国家目標に据える。両国の連携による本取り組みは、CCUSを通じた国際協力型カーボンクレジット創出のモデルケースとなることが期待される。
MRIとbpは今後も両国政府および関係機関と協力し、CCUSを活用した脱炭素ソリューションと国際的な制度設計の確立を進める方針だ。