スペインのエネルギーインフラ企業Enagásと石灰メーカーCalcinorは、脱炭素化を目的に、年間最大90万トンのCO2を回収・管理するプロジェクトに合意した。CCUS(炭素回収・利用・貯留)の全工程をカバーするバリューチェーンの構築を目指し、EUからの資金援助の活用も視野に入れる。
今回の協定では、Calcinorが自社の石灰製造プラントでCO2回収装置を導入し、Enagásが回収後のCO2の輸送・液化・貯留、あるいは再利用を担う。Enagásの再ガス化ターミナルをCO2輸送・積出のハブとして活用し、長期的には海外輸送によるCCS(炭素回収・貯留)も選択肢とする。
両社はこの取り組みを「統合型産業カーボンマネジメントシステム(Integrated Industrial Carbon Management System)」の先進事例と位置づけており、EUのイノベーションファンドやPCI(Projects of Common Interest)への申請も計画。制度的支援と技術的インフラの両輪で、スペインの産業界全体にわたる大規模なCO2管理のための基礎の確立を目指す。
Enagás事業開発本部長ヘスス・サルダーニャ氏は、「脱炭素が困難な鉱物系産業で、バリューチェーン全体を統合するモデルは革新的。産業競争力を維持しつつ脱炭素化を進める鍵になる」と強調する。
Calcinorのアンドニ・メンディオラ事業開発責任者も、「カーボンマネジメントは単体技術ではなく、回収から利用・貯留までを包含したトータルソリューションが必要。Enagásとの協働で包括的かつ実効性ある脱炭素化に取り組む」と述べた。
本案件は、工業系CO2排出源を対象としたCCUSスキームが、欧州の地域エネルギー戦略の中核に据えられつつあることを象徴するものと言える。
参照:https://www.enagas.es/en/press-room/news-room/press-releases/calcinor-enagas-deal/