Carbon Xtractは清水建設、双日と連携し、大気中のCO2を直接分離回収する小型分散型DAC装置「m-DAC®」を、清水建設の都市型イノベーション拠点NOVARE(東京都江東区)に試験導入した。東京都「GX関連産業創出へ向けた早期社会実装化支援事業」の一環で、実証は2025年秋に開始し、最長2028年度末まで継続する。
本実証では、NOVARE内の会議室の空気からm-DACがCO2を選択的に分離回収し、施設内の植物栽培プラントへ供給する。高濃度CO2による光合成促進で生育速度の向上を見込み、特定空間で完結するクローズドな炭素循環モデルの技術的有効性を検証する。
本実証は、2024年に東京都の支援事業へ採択された都市実装の取り組みを基盤とする。
分散配置を前提とする装置設計
従来、大気中CO2の回収は大規模設備を前提とするのが一般的であった。m-DACはガス分離膜を用い、大型化を前提とせず、顧客ニーズに応じたスケーラブルな装置設計を可能とする点を特長とする。
これにより、ビル、駅、商業施設など都市の多様な環境への分散配置を想定する。
大規模集中型がスケールメリットによる回収コスト低減を追求するのに対し、分散型は回収拠点を利活用需要の近接地に置くことで、CO2の輸送・供給に伴うコストと損失を抑える設計思想に立つ。両者はDAC実装における異なる最適化の方向性を示すものといえる。
回収CO2の利活用先
回収したCO2の利活用先として、本実証では植物栽培を想定する。Carbon Xtractは将来的な用途として、炭酸水や炭酸シャワーの原料、セメントやコンクリートへの固定化、クリーンなメタンガスへの変換を挙げる。
これらのうち、固定化を伴う用途はCO2を長期にわたり貯留する一方、植物栽培や炭酸飲料用途は利用後にCO2が再放出される。
利活用の経路によって炭素の固定期間は大きく異なる。
編集部の視点
本件は、都市空間における分散型DACの社会実装に向けた実証事例として位置づけられる。
回収拠点を利活用需要の近接地に分散配置する設計は、CO2の輸送を前提とする集中型とは異なる実装経路を示す。都市内で回収から利活用までを完結させるモデルが技術的に成立すれば、ビルや商業施設といった既存インフラがCO2の回収・供給拠点へ転用される余地が生まれる。東京都の支援事業という制度的後ろ盾も、初期実装の環境を整える要素となる。
ただし、本実証はDACCSではなくCCUの枠組みにある。回収CO2の主たる利活用先である植物栽培や炭酸飲料用途は利用後にCO2が再放出されるため、本件が直ちに除去系カーボンクレジットの創出に結びつくものではない。炭素除去市場への示唆はこの段階では限定的である。
分散型モデルの普及は、小型装置のエネルギー効率と回収コストが集中型に対してどこまで競争力を持つか、そしてセメントやコンクリートへの固定化など長期貯留を伴う利活用先をどれだけ確保できるかが左右する。
参考:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000184495.html
