コンプライアンスカーボンクレジット市場とは、企業や組織が法的規制に基づいて温室効果ガス(GHG)排出量の上限遵守を求められ、その枠内で排出権を売買する市場を指す。
価格シグナルを通じてGHG排出削減のインセンティブを生み出す仕組みとして機能している。
コンプライアンスカーボンクレジット市場とは
コンプライアンスカーボンクレジット市場(Compliance Carbon Market, CCM)は、政府や国際機関、または地域連合が定める「排出上限(cap)」に従い、参加主体が義務として排出枠を取得、または手放すことで運営される市場である。「コンプライアンスカーボンマーケット」や「コンプライアンス炭素市場」と呼ばれることもある。
運営主体は多岐にわたり、主に以下のカテゴリーに分類される。パリ協定6条のメカニズムとして設立される国際的な市場も、この市場の一形態と位置づけられる。
- 政府・地方自治体
EU ETS、カリフォルニア州キャップアンドトレード制度、東京都の排出量取引制度など。 - 国際機関
国連気候変動枠組条約(UNFCCC)が管理する京都議定書、パリ協定6条に基づくカーボンクレジットなど。 - 地域連合
Western Climate Initiativeなど。
主要なコンプライアンスカーボンクレジット市場
これらは「コンプライアンスカーボンクレジット市場」として位置付けられ、法的義務に裏打ちされた取引が行われる。
EU ETS
欧州連合(EU)が運営主体となり、電力や産業(製造、セメント、製鉄)を対象とする。世界的に大規模な市場であり、段階的なキャップの引き下げが行われる点が特徴である。
カリフォルニア州キャップアンドトレード制度
カリフォルニア州政府およびWCI連合が運営する。発電所、製造業、燃料サプライヤーを対象とし、ケベック州ETSとのリンクや、価格のフロア(下限)・シーリング(上限)の導入が特徴である。
東京都排出量取引制度
東京都が運営主体となり、特定規模排出事業者(ボイラー、焼却炉等を持つ施設)を対象とする。地方自治体によるモデル制度としての側面を持つ。
韓国ETS
韓国政府が運営し、電力、製造業、航空セクターなどを対象とする。
京都メカニズム
国連気候変動枠組条約事務局(UNFCCC)が管理する。各メカニズム別にAAU、CER、ERU、RMUといった国際クレジット(AAU/Assigned Amount Unit等)を管理対象とする。
Regional Greenhouse Gas Initiative (RGGI)
米北東部の州連合が運営し、発電所を対象とする。米国における州間ETSであり、排出枠を縮小する仕組みを持つ。
中華人民共和国ETS
中国国家発展改革委員会が運営し、発電セクターなどを対象とする。大規模な排出量をカバーする市場である。
まとめ
コンプライアンスカーボンマーケットは、政府、国際機関、地域連合など多様な主体が法的義務に基づき運営する排出権取引市場である。これらの市場は、法令による総量規制と市場メカニズムを組み合わせることで、確実かつ効率的にGHG排出削減を促進するものである。

