チューリッヒ保険が「DAC+水素」のカーボンクレジットを1,200トン購入 英スタートアップParallelから調達

村山 大翔

村山 大翔

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英スタートアップのパラレル・カーボン(Parallel Carbon)は、スイスの保険大手チューリッヒ保険グループ(Zurich Insurance Group)と、1,200トン分の炭素除去(CDR)クレジットの先行購入契約を締結した。

このクレジットは、大気直接捕捉(DAC)と地中貯留、さらに水素製造を組み合わせた独自の「DAC+H2」技術により生成される。プーロ・スタンダード(Puro.earth)に基づく炭素除去証明書(CORCs)として発行され、2月9日に詳細が明らかになった。

今回の核となるのは、パラレル・カーボンが開発した二酸化炭素(CO2)ネガティブな水素製造プロセスだ。

同社の技術は、DACによるCO2回収と同時に「再生可能」または「グリーン」と定義される極めて低炭素な水素を産出する。一般的な規制値である水素1kgあたり3kg-CO2eのライフサイクル排出量を大幅に下回る設計となっており、製造された水素は低炭素アンモニア製造業者へ販売される見通しだ。

チューリッヒ保険にとっては、今回の先行購入を通じて高品質なCDRを確保するだけでなく、将来的な持続可能航空燃料(e-SAF)の供給基盤など、脱炭素化に向けた新たな技術市場での橋頭堡を築く狙いがある。

チューリッヒ保険のサプライチェーン・サステナビリティ部門責任者であるクリス・ミンター氏は、「パラレル・カーボンの統合アプローチは、質の高いCDRと将来的なコスト改善の道筋を兼ね備えており、急速に発展するCDR市場において重要なポジションを確保できる」と述べ、同社の技術力と経済合理性を高く評価した。

パラレル・カーボンにとっても本契約は大きな節目となる。

同社は2030年までのCDRクレジット供給枠の大部分を既に完売しており、CDRの先行販売を収益の柱とすることで、クリーン水素プロジェクトの財務リスクを低減し、競争力のある価格での水素供給を可能にしている。

同社のライアン・アンダーソン最高経営責任者(CEO)は、「炭素除去と脱炭素化を並行して行う統合システムは、現在の政策環境において構造的な優位性を持つ」と指摘し、同じインフラから炭素除去とクリーン分子(水素など)の両方を生み出すことで、気候変動対策としての価値を最大化できると強調した。

今回のニュースは、単なるクレジット売買に留まらず、CDR(炭素除去)が「水素エネルギー事業の採算性を支えるファイナンスツール」として機能し始めたことを示唆しています。

これまで高コストが課題だったDAC技術ですが、水素製造と組み合わせることでインフラコストを共有し、さらにクレジット収入を早期に確定させることで、プロジェクトのデリスキング(リスク軽減)に成功しています。

日本企業にとっても、水素戦略とCDRを別々に考えるのではなく、パラレル・カーボンのような「統合型モデル」を検討することが、グローバルな脱炭素市場での競争力を高める鍵になるでしょう。

参考:https://www.parallelcarbon.com/post/parallel-carbon-to-supply-1-200-tons-of-cdr-to-zurich-insurance-group-using-carbon-negative-hydrogen