DKSHがKlimateから、カーボンクレジットを大型調達 タイとケニアのプロジェクト

村山 大翔

村山 大翔

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スイスの商社DKSHは、炭素除去テクノロジー企業Klimateと提携しCDRクレジットの調達を開始した。この連携は、DKSHが進める包括的なサステナビリティ戦略の一環として位置づけられている。同社はこれまでもエネルギー効率の向上、輸送ルートの最適化、電気・ハイブリッド車両の導入拡大など多面的な排出削減策を講じてきたが、今回のCDRクレジット導入により、Scope3を含む排出の「削減だけでなく除去」にも着手する形となる。

ケニアとタイで展開、DKSHが選んだ2つのCO2除去プロジェクト

Klimateは、科学的根拠に基づく高品質な炭素除去ソリューションを世界中から厳選し、企業のサステナビリティ戦略に合わせて提供するプラットフォームだ。今回、DKSHが投資するCDRクレジットは2つのプロジェクトから発行される。ひとつはケニアのリフトバレー地域におけるDACプロジェクト「ハミングバード」であり、これはOctavia Carbonと鉱物貯留パートナーのCellaによって展開されている。再生可能エネルギーが豊富なこの地域では、地熱や水力を活用し、空気中からCO2を直接回収して地下の岩盤に恒久的に貯留するという仕組みが稼働している。

もうひとつのプロジェクトはタイにおけるバイオ炭の製造で、農村地域の農家が作物残渣を炭化処理することで炭素を土壌に固定し、同時に農地の土壌改良や大気質の改善、さらには持続可能な収入源の創出にもつながっている。これらの地域住民にとって、バイオ炭プロジェクトは生活の質の向上と地域経済の活性化をもたらす重要な社会的インパクトを生んでいる。

DKSHのサステナビリティ戦略におけるCDRの役割

DKSHのCEOステファン・ブッツ氏は、「Klimateとの協業は、当社のC02削減施策を補完するものです。特にタイのような重要市場で、持続可能な収入と環境改善を同時に達成できることに大きな期待を寄せています」と述べている。

DKSHは、2020年を基準年として2025年までにScope1,2を65%削減、2027年までに70%削減という目標を掲げている。今回のCDRクレジット取得は、そうした高い目標を実現するための「最後の一手」ではなく、全体戦略を補強する“科学的裏付けある選択肢”として注目される。

Klimate:信頼性の高い炭素除去ポートフォリオを提供

Klimateはデンマーク・コペンハーゲンに拠点を置く気候テックスタートアップ。科学的根拠と技術による検証性のあるCO2除去ポートフォリオを構築しており、森林再生からDACまで、幅広い手法に対応する。

CCOのErik Wihlborg氏は「DKSHのような企業が、オフテイク契約という形で除去市場を支援してくださることは、CDR市場全体の信頼性と規模拡大にとって極めて重要です。」とコメントしている。

参照:https://www.dksh.com/global-en/home/media/news?id=en-c13ec40f-3a3e-47a2-8a45-9129da4b3b43:1