米大手農業企業Perdue AgriBusinessは、クライメートスタートアップEionと共同で、農業供給網内における強化風化(ERW)技術を活用した二酸化炭素除去(CDR)プロジェクトを開始。業界初の“インセッティングERW契約”により、持続可能な農業と炭素削減を両立させる一歩を踏み出しました。
世界初のERWインセッティング、CO2を土壌でロックオン
Perdue AgriBusinessは、Eionが開発するオリビン(かんらん石)ベースの強化風化技術を導入。中部大西洋地域の農地で活用し、農業生産活動と連動した形で3,500トンのCO2除去を目指します。
通常の「カーボンオフセット」と異なり、今回の取り組みは企業のサプライチェーン内で直接炭素を削減する“カーボンインセット”モデル。これは、バリューチェーン全体の脱炭素を志向する企業にとって、新たなスタンダードとなる可能性を秘めています。
土壌に優しく、農家にうれしいERWの仕組み
ERW技術は、大気中のCO2を鉱物が自然に吸収・固定する地質プロセスを短期間に促進する手法。Eionが使用する農業適合済みのオリビンは、農地に散布するだけでCO2を吸収しながら、土壌改良材としても機能。従来の石灰肥料と比較してコスト面でも優位性があるとされています。
Eion CEOのアナスタシア・パブロビック氏は「農家に実益をもたらしながら、地球規模の気候債務を減らす新たな手段を提供しています。」と述べています。
Perdueのサステナビリティ方針と合致
Perdue AgriBusinessは、2021年に開始した「Perdue Sustainability Program」を通じて、土壌の健康改善、水資源保全、レジリエントな農業推進に注力。今回のERW導入は、気候行動と農業経済を両立させる好例として、既存の取り組みをさらに深化させるものです。
同社の代表、ペリー・オウリー氏は「科学的根拠に基づいたソリューションで、農家を支援しながら環境負荷を減らす革新を常に模索しています。」と語ります。
農地800万acの可能性、次なる“ギガトン除去”の鍵はインセッティング?
アメリカ国内の農地面積は約8億ac。今回のような農業ベースのERW導入が広がれば、年単位で“ギガトン規模のCO2除去”も実現可能との見方も。オフセット主導だったこれまでのカーボンクレジット市場は、今後、“インセット”による事業内直接削減へと大きく舵を切る可能性があります。
Eionは今後も農業サプライチェーンに特化した炭素除去モデルを拡大し、“削って減らす”カーボンクレジットの新たなモデルを切り開く構えです。