Verraが「デジタルMRV」による初の発行承認 高頻度カーボンクレジット供給が本格始動

村山 大翔

村山 大翔

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カーボンクレジットの世界最大手であるベラ(Verra)は2026年2月19日、デジタル技術を用いた計測・報告・検証(DMRV)のパイロット運用において、初となるカーボンクレジットの発行を承認した。

今回の承認は、従来の年単位での発行プロセスを劇的に短縮し、月次や隔月などの「高頻度発行」を実現する大きな転換点となる。

初のデジタル承認を受けたのは、コモロ諸島のグランドコモロ島で展開されている「フンブニ・ミツァミウリ太陽光発電所(VerraプロジェクトID: 3788)」だ。同プロジェクトは、アエラ・グループ(Aera Group)が開発・運営を担い、クリーン開発メカニズム(CDM)の手法を用いて、電力インフラが脆弱な地域に再生可能エネルギーを供給している。検証機関(VVB)であるサステインサート(SustainCERT)が、提出されたモニタリングデータの検証を完全にデジタル上で完結させた。

ベラが推進するこのDMRVパイロットは、プロジェクトサイクルの完全デジタル化を目指す戦略の一環である。統合オンラインプラットフォーム「ベラ・プロジェクト・ハブ(Verra Project Hub)」を活用することで、排出削減量や吸収量の算定根拠となるデータが直接インポートされ、検証報告書の作成までを自動化に近い形で効率化する。これにより、事務手続きの負担軽減、データの透明性向上、そしてクレジット発行までのリードタイム短縮が期待される。

今回の高頻度発行プロセスでは、リスク管理として「80:20ルール」が適用された。DMRVに基づき承認されたクレジットのうち、まず80%が発行され、残りの20%はセーフガードとして一時的に保留される。プロジェクト開発者は、1年間にわたる高頻度発行の実施後、ステークホルダーへの影響などデジタル計測が困難な項目を含めた包括的な事後検証を受ける必要があり、それが完了した段階で保留分のクレジットが解放される仕組みだ。

現在、ベラは本パイロットの対象を拡大しており、二酸化炭素回収・貯留(CCS)やクリーンクックストーブ(改良型コンロ)プロジェクトなど、他の領域でもDMRVの導入テストを進めている。参加条件として、デジタル化された算定手法の採用と、全てのモニタリング項目をデジタルで記録・報告できるシステムの構築を求めている。

ボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)において、透明性と信頼性の欠如は長年の課題であった。しかし、今回のDMRVによる実証成功は、リアルタイムに近いデータ裏付けを持つ「高精度クレジット」の流通を促進する。これは、排出量実質ゼロを目指す企業にとって、より信頼性の高いオフセット手段の確保につながるだけでなく、クレジット価格の適正化にも寄与するだろう。

今回のDMRV承認は、カーボンクレジット市場が「静的な報告」から「動的なデータ資産」へと進化したことを意味する。日本企業にとっては、IoT技術や衛星モニタリングを活用した自社技術をDMRV基盤に組み込む商機となるだろう。また、高頻度発行によるキャッシュフローの改善は、多額の初期投資を必要とするCDR(炭素除去)スタートアップの資金繰りを劇的に好転させる可能性がある。

参考:https://verra.org/verra-approves-first-credits-under-dmrv-pilot-for-high-frequency-issuances/