フランスの公共サービス大手ヴェオリア(Veolia)は10月24日、北西部ル・マンで二酸化炭素(CO2)回収設備の実証運転を開始した。廃棄物発電所に設置される同施設は、1日最大10トンのCO2を約90%の効率で回収する計画で、回収した炭素を地域産業に再利用する「循環型炭素経済」の構築を目指す。
同社はル・マン都市圏共同体(Le Mans Métropole)と共同でこの事業を推進し、2028年までに約1,500万ドル(約22億円)を投じる「GreenUp」戦略の一環として位置付ける。ヴェオリアは同都市圏で半世紀にわたり廃棄物発電施設を運営しており、長年の協働関係をもとにカーボンマネジメント分野への拡張を図る。
回収されたCO2は液化後、温室栽培の施肥、ドライアイス製造、消火器充填、さらには鉱物化素材や合成燃料への転換など、地域の用途に応じて再利用される。廃棄物を資源化するこのプロセスは、炭素除去(CDR)と再利用(CCU)を組み合わせた「ローカル・カーボンサイクル」として注目されている。
ヴェオリア・フランスのジャン=フランソワ・ノグレット最高経営責任者(CEO)は、「革新こそがエコロジカル・トランスフォーメーションの中核である」と述べた。ル・マン市長で都市圏共同体の代表を務めるステファン・ル・フォル氏も「本プロジェクトによって、ル・マン都市圏はエネルギー転換の最前線に立つ」と強調した。
同社は2026年、米テキサス州ポートアーサーの有害廃棄物処理施設にも同様の設備を導入する予定で、フランスから米国へと技術展開を拡大する方針だ。世界的な公益企業が単なる排出削減から一歩踏み出し、「炭素の価値化」を通じて新たな収益源を創出する動きの一例といえる。
なお、ヴェオリアは同週、チリ・バルパライソ州で国内初の自治体・産業向け海水淡水化プラントの運転・保守契約を受注したことも発表した。同事業では100%再生可能エネルギーの活用と地元労働力の採用を掲げており、水資源と炭素削減を両輪とする同社の「GreenUp」戦略を南米にも拡張する形となる。