炭素除去(CDR)プロジェクトの開発を手掛けるインドのバラハ(Varaha ClimateAg)社は2026年2月19日、バイオマス加工業者向けのグローバルイニシアチブ「バラハ・インダストリアル・パートナーズ・プログラム(VIPP)」の立ち上げを発表した。
その第一弾として、コートジボワールにおいてカシューナッツの残渣を活用した大規模なバイオ炭プロジェクトを開始する。本事業は、dMRV(デジタル計測・報告・検証)技術を活用し、信頼性の高いカーボンクレジットを創出することで、企業の脱炭素化支援と途上国の持続可能な開発を両立させる狙いがある。
産業廃棄物を「負の遺産」から「炭素資産」へ
コートジボワールは世界有数のカシューナッツ生産拠点であるが、加工過程で大量に発生するカシューナッツの殻などの残渣が環境負荷となっていた。これまでは廃棄物として野焼きされるケースが多く、メタンガスやCO2の排出源となっていたが、今回のプロジェクトではこれらを原料として再利用する。
具体的には、提携パートナーであるリバタ・カーボン(Revata Carbon)が現地での原料調達とガス化設備の運営を担い、バレンシー・インターナショナル(Valency International)が原料供給とサプライチェーンの最適化を行う。生成されたバイオ炭は農地に散布され、土壌改良材として機能しながら、炭素を数百年にわたって安定的に固定する。
厳格なMRVとPuro.earth基準のクレジット創出
本プロジェクトで生成されるカーボンクレジットは、バイオ炭の主要な認証機関であるプーロ・アース(Puro.earth)の厳格なメソドロジーに基づき発行される。バラハ社は、独自開発のデジタルMRVプラットフォームを提供し、炭素除去量の正確な測定と透明性の確保を担当する。
プロジェクトの主な定量情報と座組みは以下の通りである。
- 出資・支援
英国の政府系金融機関であるブリティッシュ・インターナショナル・インベストメント(BII)がバレンシーを支援。 - 事業規模
バラハは2024年に2,000万ドル(約30億円)の資金調達を実施しており、西アフリカ全域への拡大を視野に入れている。 - 販売先
創出されたクレジットは、バラハのプラットフォームを通じて、世界の主要企業や機関投資家へ販売される。
過去の経緯と今後の展望
バイオ炭による炭素除去は、自然由来の解決策の中でも比較的永続性が高く、測定が容易であることから、近年カーボンクレジット市場で需要が急増している。
バラハは2022年の設立以来、南アジアを中心に再生農業や強化風化(ERW)などのプロジェクトを展開してきたが、今回のVIPP立ち上げにより、アフリカ市場での産業化を加速させる構えだ。
今後はカシューナッツ以外の農業残渣にも対象を広げ、グローバルサウスにおける「排出削減」ではなく「除去」のビジネスモデルを確立することが期待される。
今回のバイオ炭プロジェクトは、単なる環境貢献にとどまらず、未利用資源を「クレジット収益」に変える高度な資源循環モデルである。日本企業にとっても、サプライチェーン排出量の削減(Scope3)だけでなく、途上国支援と紐付けた高品質なJCM(二国間クレジット制度)やボランタリークレジット調達の先行事例として、非常に示唆に富む動きだと言える。
