7月31日、米国上院でティナ・スミス議員(民主党・ミネソタ州)とトッド・ヤング議員(共和党・インディアナ州)が、農地の土壌に蓄えられる炭素の量を正確に測る技術を開発するための超党派法案を再提出した。全米の農地では年間最大2.2億ポンド(約1,000万トン)の炭素が貯留できるとされるが、現在の技術ではその実態を正確に把握できていない。
この法案「農業土壌の健全性研究促進法(Advancing Research on Agricultural Soil Health Act)」は、農家が土壌の状態をより正確に把握し、炭素を多く蓄える農法を選べるようにすることを目的としている。
米農務省(USDA)に対し、以下のような施策を求めている。
- 土壌炭素を測定するための、統一された科学的な方法をつくること
- 炭素の測定・報告・検証(MRV)に使えるツールを開発すること
- 実際の農場で新技術を試し、農家の理解と導入を進めること
- 全国規模の「土壌炭素データベース」を構築し、継続的にデータを収集・分析すること
- 土壌の変化を予測できるシミュレーションツールをつくること
この法案が成立すれば、バイオ炭(Biochar)などの炭素除去(CDR)技術の活用も進みやすくなる。
環境系シンクタンク、カーボンワンエイティ(Carbon180)の政策責任者ダフネ・イン氏は「この法案は、農家が炭素貯留に役立つ選択をするための実用的な情報を提供する」と話す。
環境保護団体、エンバイロメンタル・ディフェンス・ファンド(EDF)のジョアンナ・スラニー副代表は「土壌の状態を正確に把握できるようになれば、生産性と環境保全の両立がしやすくなる」と述べた。
バイオ炭企業、カーバ(Carba)のCEOアンドリュー・ジョーンズ氏は「土壌炭素の標準的な測定方法ができれば、バイオ炭などのCDR技術を大規模に広げられる」と強調した。
ブレイクスルー研究所(Breakthrough Institute)のエミリー・バス氏は「新たな測定ツールやモデル開発によって、地域ごとに最適な農法が見えてくる」と今後への期待を語った。
この法案は、秋の議会での予算審議に向け、農業と気候対策をつなぐ重要な一歩として注目されている。