CO2輸送網の構築でCCSの商用展開を加速、年間最大1,000万トン貯留を見据えた重要インフラに
英国の低炭素社会実現に向けた国家プロジェクト「HyNet North West」において、United Living Energyが総額2億5,000万ポンド規模のCCS用パイプライン整備契約を獲得した。発注元は、イタリアのエネルギー大手Eniの子会社Liverpool Bay CCS Limitedで、同社はCO2輸送および貯留の中核インフラ整備を担う。
北西部の産業排出を削減、英国CCS戦略の要
契約対象となるのは、チェシャー州から北ウェールズまでの全長34kmの新設パイプラインで、既存の24kmのラインと接続し、工業排出CO2をリバプール湾の枯渇ガス田に輸送・貯留する。
本プロジェクトは、HyNetが掲げる「年間450万トンのCO2貯留」開始に向けた初期フェーズに位置づけられ、将来的には1,000万トン超の貯留能力へと拡張される計画だ。
雇用創出と地域経済への波及効果も期待
United Living GroupのCEOであるニール・アームストロング氏は、「カーボンキャプチャーは英国のネットゼロ目標に不可欠な要素です。このプロジェクトは、北西部地域にスキル育成や雇用機会、地域企業の成長といった大きな恩恵をもたらします。」と述べている。
すでに50名の雇用が開始されており、今後2年間でさらに300名の直接雇用が創出予定。加えて、サプライチェーン全体でも約300名の波及雇用が見込まれている。
英国のCCS推進とHyNetの位置付け
英国政府は2024年3月、同パイプラインの建設計画を正式に承認。HyNet North Westは、産業地帯の排出削減とともに、水素製造、再生可能ガスの供給、インフラ整備などを通じて地域全体の「クリーン産業クラスター」化を目指す国家的重点プロジェクトだ。
関連プロジェクトには、Eniによるリバプール湾での貯留拠点開発、Arup社によるトンネル建設設計なども含まれ、英国におけるCCSの商用スケーリングの試金石となっている。
参照:https://unitedliving.co.uk/2025/04/25/united-living-awarded-contract-by-liverpool-bay-ccs