英スタロー・ターミナル(Stanlow Terminals Limited)は2026年2月25日、スピリット・エナジー(Spirit Energy)およびプログレッシブ・エナジー(Progressive Energy Limited)と提携し、回収された二酸化炭素(CO2)を船舶で輸送・貯留するための「ロジスティクス回廊」の商用化に向けた調査を開始した。本計画は、英国北西部のスタロー製造コンプレックスをハブとし、カーボンクレジット創出の基盤となる大規模な炭素除去(CDR)インフラの構築を目指すものである。
今回の合意に基づき、3社はリバプール港内のトランメア・ターミナルおよびスタロー製造コンプレックスにおける「CO2輸入ターミナル」の設置について、技術的・商用的な実現可能性を評価する。
この構想の核心は、英国全土の産業拠点から排出・回収されたCO2を船舶でマージーサイドに集約し、既存のパイプライン網を通じてアイリッシュ海東部の「モアカム・ネットゼロ(MNZ)」貯留施設などの洋上枯渇ガス田へ送ることにある。これにより、パイプライン接続が困難な遠隔地の排出源に対しても、永続的な地中貯留へのアクセスを提供することが可能となる。
本プロジェクトは、スタロー地区を低炭素産業のハブへと再編する広域戦略の一環である。同地区はすでに、近隣の精製プロセスから発生するCO2をリバプール湾へ貯留する「ハイネット・ノースウェスト(HyNet North West)」プロジェクトに組み込まれている。
今回の新構想は、親会社であるエッサール・エナジー・トランジション(Essar Energy Transition)が推進する**30億ドル(約4,500億円)**規模の脱炭素プログラムを補完するものだ。同社は、従来の石油精製拠点から、低炭素燃料の製造およびカーボンクレジット創出に直結する炭素管理サービスのプラットフォームへと転換を図っている。
各社のリーダーは、この連携が英国の産業競争力維持に不可欠であると強調している。
- スタロー・ターミナル
「CO2の移動と貯留における新たな機会を切り開き、地域の産業の未来を強化する」 - スピリット・エナジー
「世界最大級の洋上CO2貯留拠点であるMNZを通じて、英国中の排出者に脱炭素のルートを提供する」 - プログレッシブ・エナジー
「熟練した雇用の保護と、低炭素エネルギー革新における地域の地位確立を目指す」
しかし、足元では英国の水素事業やCCS計画の一部で遅延や中止が相次いでおり、規制の不透明さが懸念されている。本プロジェクトが単なる実現可能性調査に留まらず、銀行融資可能な「インフラ資産」へと昇華できるかが今後の焦点となる。
| 項目 | 内容 | 意義 |
| 貯留手法 | 洋上枯渇ガス田への地中貯留 | 除去の永続性が高く、高単価なカーボンクレジットを創出可能 |
| 輸送手段 | 船舶(インポート・ターミナル) | 産業クラスター外の企業もCCSバリューチェーンへ参加可能に |
| 経済効果 | 4,500億円超の関連投資 | 地域の雇用維持とグリーン成長の両立 |
今回の船舶輸送網の構築は、カーボンクレジットの供給源を「近隣工場」から「全国の排出源」へと拡大するゲームチェンジャーとなる。日本企業にとっても、船舶を用いたCO2輸送(LCO2キャリア)やCCSバリューチェーン構築は、アジア圏でのカーボンクレジット創出において極めて重要な先行事例だ。特に、排出削減が困難なハード・トゥ・アベート産業を抱える中小企業にとって、こうした共同インフラの整備は、将来的なカーボンクレジット調達コストの抑制に直結するだろう。
