高級ブランドのコーチ(Coach)やケイト・スペード ニューヨーク(kate spade new york)を傘下に持つ米タペストリー(Tapestry)は2026年2月18日、炭素除去(CDR)分野の世界的リーダーであるスイスのクライムワークス(Climeworks)と10年間にわたる長期契約を締結した。
同社にとって初となるこのCDR購入は、単一の手法に依存せず、大気直接回収(DAC)や自然の鉱物化プロセスを加速させる技術など、5つの異なる手法を組み合わせた「分散型ポートフォリオ」への投資であることが最大の特徴だ。
今回の提携により、タペストリーは自社のScope1(直接排出)の削減を補完する形で、高品質なカーボンクレジットを活用する。昨今、カーボンクレジット市場では特定のプロジェクトに起因する不確実性や無効化リスクが課題となっているが、同社は複数のCDR手法を組み合わせることでリスクを分散し、長期的な気候変動対策の効果を確実なものにする戦略をとった。
クライムワークスにとって、タペストリーは北米の小売・消費財セクターにおける初の顧客となる。同社の科学チームが厳選したポートフォリオには、再生可能エネルギーの生成と永続的なCO2貯留を組み合わせた最新技術や、土地や地域社会へのコベネフィットが高いプロジェクトが含まれている。
これまでCDR市場は、主にIT大手や金融機関が先行して投資してきたが、今回の事例はファッション・小売業界においても「質の高い炭素除去」への関心が急速に高まっていることを示している。タペストリーのサステナビリティ部門責任者であるローガン・デュラン氏は、「バリューチェーン全体の排出削減に注力すると同時に、新興の気候ソリューション市場の発展を支援していく」と述べている。
カーボンクレジットの価格は手法により大きく異なるが、クライムワークスが提供するような永続性の高い技術系CDRは、従来の森林由来カーボンクレジット等と比較して高価で取引される傾向にある。今回の10年契約は、初期段階の技術に対する長期的な資金提供を意味し、CDR市場全体のコスト低減とスケールアップを後押しする重要な一歩となる。
欧米のブランド企業が「分散型ポートフォリオ」を選んだことは、日本企業にとっても示唆に富む。
単一の安価なカーボンクレジットに頼るリスクを避け、複数の技術に投資して「リスクヘッジ」を行う手法は、今後J-クレジットや海外クレジットを活用する日本の中小・中堅企業においても、信頼性担保のためのスタンダードになる可能性がある。
参考:https://climeworks.com/press-release/tapestry-and-climeworks-announce-carbon-removal-partnership
