スイス通信大手のスイス・コム(Swisscom)は2026年1月26日、カーボンクレジットの資産管理プラットフォームを運営するドイツのシーザー(CEEZER)と戦略的提携を締結したと発表した。
本提携を通じて、スイス・コムは自社の2035年ネットゼロ目標に向けた高品質な炭素除去(CDR)の調達を加速させる。さらに、同社の法人(B2B)顧客に対しても、シーザーが提供する科学的根拠に基づいたCDRポートフォリオへのアクセスを可能にする仕組みを構築する。
今回の提携の背景には、スイス・コムが進める「グループ・サステナビリティ戦略2030」がある。
同社はSBTiのガイドラインに準拠し、2035年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするネットゼロの達成を掲げている。シーザーのプラットフォームを活用することで、厳格なリスク評価に基づいた耐久性の高いCDR資産を直接確保する体制を整える。
スイス・コムは、単なる提携にとどまらず、シーザーに対して戦略的な資本出資も実施した。具体的な出資額は公表されていないが、この投資は高品質な気候ソリューションの流通を加速させるための戦略的コミットメントと位置付けられている。これにより、市場で未だ供給が不足している技術系CDRの普及を後押しする狙いがある。
スイス・コムのサステナビリティ部門責任者であるサスキア・ギュンター(Saskia Günther)氏は「負の排出(ネガティブエミッション)技術は、まだ市場で十分に普及していない。私たちはこのギャップを埋める一助となりたい」と述べた。続けて、ギュンター氏は「自社だけでなく、すべての企業が必要な技術を十分な量で利用できるよう、市場の拡大を支援する。将来的には、当社の法人顧客もこの市場にアクセスできるようにしたい」と指摘した。
スイスはクライムワークス(Climeworks)などの主要企業を擁する「技術的炭素除去の誕生の地」の一つであり、企業に対して信頼性の高いネットゼロ・ロードマップの策定を求める先進的な規制環境にある。シーザーの最高経営責任者(CEO)であるマグヌス・ドレウェリーズ(Magnus Drewelies)氏は「スイス・コムのような洗練された要件を持つ企業を支援できることは、当社のソリューションの強さを証明するものだ」と述べた。
本提携により、スイス・コムの法人顧客は、複雑な炭素市場を直接ナビゲートすることなく、シーザーを通じて透明性の高い高品質なカーボンクレジットを調達できるようになる。
今後、スイス国内および国際的な企業に対し、野心的な気候目標を具体的な行動へと移すための調達ソリューションが順次提供される予定だ。
「通信インフラ」が炭素除去の流通網になる意義
今回の提携は、単なる一企業のカーボンオフセットの取り組みを超えた、非常に重要な転換点を示唆しています。注目すべきは、通信大手であるスイス・コムが「自社の排出削減」のためだけでなく、「顧客(B2B)への再販・提供」を視野にCDRプラットフォームと組んだ点です。
日本市場に置き換えると、NTTやソフトバンクといった通信メガキャリアが、法人向けソリューションの一環として「高品質な炭素クレジット」をセット販売するようなモデルです。中小企業にとって個別のCDR調達はハードルが高いですが、既に契約している通信インフラ経由でアクセス可能になれば、日本国内でもCDRの普及が一気に進む可能性があります。
スイス・コムは2035年という、一般的な2050年よりも15年早いネットゼロ目標を掲げています。この「前倒し」の姿勢が、市場に先駆けてCDRの確保を急がせ、プラットフォーム側への出資という強いコミットメントに繋がったと言えるでしょう。


