スイス国際航空、CO2固定化スタートアップの炭素除去(CDR)技術を航空業界に導入

村山 大翔

村山 大翔

「スイス国際航空、CO2固定化スタートアップの炭素除去(CDR)技術を航空業界に導入」のアイキャッチ画像

スイス国際航空(SWISS)は8月26日、スイスのクライメートテック企業ネウスタルク(neustark)と長期的な戦略的パートナーシップを締結したと発表した。航空会社が同社の炭素除去(CDR)技術を支援するのは世界で初めてであり、航空業界におけるCO2削減の新たな一歩となる。

ネウスタルクは、廃コンクリートや鉱物廃棄物にCO2を固定化する「ミネラリゼーション(鉱物化)」技術を持ち、再び大気中に排出されることなく恒久的に貯留することを可能にしている。

同社は現在、欧州7カ国で38カ所の施設を運営しており、今後数十万トン規模の除去能力に拡大する計画だ。

SWISSは今回の契約により、ネウスタルクの欧州での事業拡張を資金面で支援する。契約は2030年まで有効で、処理量や期間を拡大するオプションも盛り込まれている。

SWISSのイェンス・フェーリンク最高経営責任者(CEO)は、「恒久的なCO2除去は航空業界のネットゼロ実現に不可欠だ。われわれは可能な限り早い段階でこの技術に関与し、規模拡大を後押しする」と述べた。

一方、ネウスタルク共同創業者のバレンティン・グートクネヒト氏は「SWISSのようなパイオニアが参画することで、われわれは毎日指数関数的に増加する量のCO2を恒久的に取り除くことができる」と強調した。

両社は、CO2排出の多い航空と建設という二つの産業を結びつけることで、耐久的なCDRの商業化を加速させる狙いだ。

SWISSはすでに、二酸化炭素直接空気回収(DAC)に取り組むクライムワークス(Climeworks)や太陽燃料を開発するシンヘリオン(Synhelion)とも提携しており、持続可能航空燃料(SAF)の利用と併せて多層的な気候戦略を展開している。

一方、ネウスタルクは2024年6月にブラックロックとテマセクが主導した資金調達で6,900万ドル(約101億円)を確保し、2030年までに100万トンのCO2を除去する目標を掲げている。英国では建材大手アグリゲート・インダストリーズとの提携を進め、スイスでは保険大手AXAスイス向けに1,800トンのCDR契約を結ぶなど、顧客基盤を広げている。

国際的には、米国のダイレクトエアキャプチャー企業ワンポイントファイブ(1PointFive)が全日本空輸(ANA)やイージージェット(easyJet)と契約を進めており、航空業界全体でCDR技術導入の機運が高まっている。

SWISSとネウスタルクの提携は、航空業界における恒久的CDR技術の商業化を加速する「最初の事例」として注目される。

参考:https://newsroom.swiss.com/en/a-swiss-innovation-for-permanent-carbon-removal-swiss-and-neustark-conclude-strategic-partnership/