スイートウォーター炭素貯留ハブ 米国最深のCO2貯留井戸を掘削完了

村山 大翔

村山 大翔

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ワイオミング州スイートウォーター郡で進む炭素貯留プロジェクト「スイートウォーター炭素貯留ハブ(SCSハブ)」が、米国で最も深いクラスVI炭素貯留井戸の掘削に成功した。運営するワイオミング大学エネルギー資源学部(University of Wyoming’s School of Energy Resources (SER))とフロンティア・インフラストラクチャー・ホールディングス(Frontier Infrastructure Holdings)は9月2日、同州における商業規模の炭素隔離に向けた重要な節目だと発表した。

新たに完成した「J1-15井戸」は深度18,437フィート(約5,620メートル)に達し、既存の酸性ガス圧入実績のある地点から25マイル(約40キロ)離れた場所で地質的な類似性が確認された。これにより、長期的な貯留能力への信頼性が一段と高まったとされる。

フロンティア社のロビー・ロッキー共同CEOは「2本目の井戸の掘削と試験成功により、貯留層の解釈が裏付けられ、この地域の貯留ポテンシャルが確認された。より深い井戸により地下構造を包括的に把握でき、ワイオミング州の産業に実用的な炭素解決策を提供する姿勢を強めることができた」と述べた。

今回の掘削では、既存の「SCS-1井戸」に加え、マディソン石灰岩層まで到達。北米最大のCCS事業「シュートクリーク」でも利用されている高優先度の地層であり、ログデータからは強い孔隙率と流動性が確認された。SER経済地質研究センター(CEGR)のプログラムマネージャー、ジョン・ジャオ氏は「連続した孔隙と流れの強いゾーンが確認され、優れた貯留能力を示す結果となった」と説明した。

現在は岩芯試料や水試料、検層データの分析が進められており、次の段階では詳細なモデル化、規制当局による許認可取得、CO2圧入準備が焦点となる。CEGRのフレッド・マクラフリン所長は「この井戸から得られたデータはSCSハブの実現可能性を裏付け、ワイオミング州が新興する炭素経済で存在感を強めるために不可欠だ」と強調した。

SCSハブは米エネルギー省の「カーボンセーフ(CarbonSAFE)」イニシアチブの一環で、地域の工業排出源から排出されるCO2を恒久的に貯留することを目的とする。フロンティア社の開発責任者アリシア・サマーズ氏は「クラスVI許可の取得と深度掘削の遂行には綿密な計画と規制当局との調整が必要だった。得られた地質データは、この地を選定した理由を改めて裏付けた」と語った。

今後、規制審査や技術的評価を経て圧入段階に進む予定であり、2020年代後半にはワイオミング州が北米有数の炭素貯留拠点として台頭する可能性がある。

参考:https://www.uwyo.edu/news/2025/09/sweetwater-carbon-storage-hub-completes-nations-deepest-carbon-storage-well.html