米エネルギーサービス企業のセンデロ・エナジー・ソリューションズ(Sendero)と非営利カーボンレジストリのビーカーボン(BCarbon)は12月9日、テキサス州で石油・ガス坑井の閉鎖(プラグ処理)を通じ、1万475トン相当のカーボンクレジットを発行したと発表した。
老朽化した坑井からのメタン漏洩を防止するプロジェクトにより創出されたもので、閉鎖コストに悩む中小規模のエネルギー事業者に対し、カーボンクレジット市場を活用した新たな資金調達の道筋を示す事例となる。
閉鎖コストをカーボンクレジット収益で相殺
今回のプロジェクトでは、シーボード・オペレーティング・カンパニー(Seaboard Operating Company)が保有するメタン漏洩のある坑井を対象に、適切な閉鎖処理(P&A:Plugging and Abandonment)が実施された。ビーカーボンが策定した「坑井閉鎖によるメタン排出排除(MEEWP)」プロトコルに基づき、第三者機関による検証を経て1万475トンのカーボンクレジットが発行された。
このスキームの核心は、法的義務であるものの高額な費用がかかる「坑井閉鎖」を、カーボンnクレジット販売による収益で相殺可能にした点にある。センデロの共同創業者兼社長であるデビッド・スチュワート氏は次のように述べた。
「質の高いP&A手順とメタン測定を連携させることで、カーボンクレジットの創出が可能になる。これにより、小規模事業者は漏洩している坑井を閉鎖して負債を圧縮し、土地を自然の状態に戻すことができる」
「負の遺産」放置問題への実用的解
米国各地では、独立系事業者が低生産性の坑井を多数管理しているが、これらを責任を持って維持・閉鎖するには多額の投資が必要となる。閉鎖コストの負担から処置が遅れ、環境負荷のリスクがある状態で放置されたり(アイドルウェル)、管理能力の低い事業者へ売却されたりするケースが後を絶たない。
センデロとビーカーボンの連携は、こうした「限界坑井」を抱える事業者に対し、資産を売却や放置する代わりに、カーボンクレジット収益を活用して自ら閉鎖するという実用的な選択肢を提示した。
ライス大学発の厳格なプロトコル
ビーカーボンのMEEWPプロトコルは、作業開始前の明確なメタン排出の証拠、事前計画、および独立した第三者による検証を義務付けている。今回のプロジェクトでも、閉鎖後に現地でテストが行われ、坑井が恒久的に封印され、排出が完全に止まったことが確認された。
ビーカーボンのテクニカルディレクター、グイド・ベルトーラ氏は次のように指摘した。
「当社のプロトコルは、検証されたメタン削減、透明性のあるデータ、そして環境と地域社会への共益を提供するために設計されている。この手法は、金銭的インセンティブの助けを借りて、放棄された坑井や孤立坑井(オーファンウェル)を責任を持って管理するためのツールとして機能することを意図している」
財務改善と環境対策の両立
今回のカーボンクレジット発行は、事業者が財務的および環境的責任を果たすための再現可能なモデルとして注目される。事業者は高コストな閉鎖処理を先送りにするのではなく、カーボンクレジット市場を活用してバランスシートを改善しつつ、長期的な環境リスクを低減することが可能になる。

