サウジアラビアのカーボンクレジット取引所を運営するリージョナル・ボランタリー・カーボン・マーケット(VCM, Regional Voluntary Carbon Market Company)は1月27日、国際的な炭素認証機関であるグローバル・カーボン・カウンシル(GCC, Global Carbon Council)との戦略的提携を発表した。
この提携により、GCCが認証したクレジットがVCMのプラットフォーム上で取引可能となり、統合からわずか1カ月で60万トンを超える取引量を記録した。中東における透明性の高い市場インフラの構築を通じて、新興市場への気候資金流入を加速させることが狙いである。
VCMは、サウジアラビア政府系のパブリック・インベストメント・ファンド(PIF, Public Investment Fund)とサウジ・タダウル・グループ(Saudi Tadawul Group)によって設立された組織である。同社は2024年11月に、中東地域最大級となるボランタリーカーボンクレジット取引所を立ち上げた。今回の提携は、この取引所に対して機関投資家レベルの信頼性と流動性を供給するための重要な布石と位置づけられている。
パートナーとなったGCCは、グローバル・サウスに拠点を置くプログラムとして、ICAOによるCORSIAの承認を初めて取得した実績を持つ。また、ICROAの認定も受けており、そのクレジットは各国のNDCや、パリ協定第6条に基づくITMOsにも活用が可能である。
VCMの暫定最高経営責任者(CEO)兼テクノロジー責任者のファディ・サアデ氏は「GCCとの提携は、信頼できる基準と実際の市場活動を通じて、ボランタリーカーボンクレジット市場を拡大する我々の取り組みを反映している。初月の好調な取引量は、サウジ市場への信頼と、高品質な供給と需要を繋ぐ取引所の役割を証明するものだ」と述べた。
また、GCCの創設会長であるユセフ・アル・ホール博士は「VCMとの提携により、GCC認証プロジェクトは透明性の高い機関市場へのアクセスが可能になった。初期の取引実績は、取引所ベースのプラットフォームがいかに気候資金を加速させ、国家の気候目標を支援できるかを示している」と指摘した。
VCMは今後も国際的なパートナーを募り、サウジアラビアおよび周辺地域における市場インフラの拡充を継続する方針である。
今回の提携の核心は、単なる「取引量の増加」ではなく、中東がパリ協定第6条を見据えた「制度的な炭素ハブ」としての地位を固めつつある点にあります。
これまでボランタリーカーボンクレジットは、民間企業による自主的なオフセットが主目的でしたが、GCCのクレジットはCORSIAやITMOsに対応しており、国を跨いだ削減成果の移転という「公的な枠組み」にも適応しています。
サウジアラビアがPIFという国家資本を投じてこのインフラを整備していることは、石油依存経済からの脱却を掲げる「ビジョン2030」の一環であり、将来的な炭素価格の主導権を握ろうとする戦略的な意図が透けて見えます。
日本企業にとっては、J-クレジットや二国間クレジット制度(JCM)以外の調達選択肢として、中東発の高品質なクレジットが台頭してくることを意味します。
特に航空業界や、グローバルなサプライチェーンを持つ製造業にとって、GCC認証クレジットの流動性向上は、調達コストの安定化に寄与するポジティブなニュースと言えるでしょう。


