Puro.earthは5月7日、Carbon Business Councilと共同でアジア太平洋初のCDRサミット「APAC CDR Summit 2025」をシンガポールで開催した。AIやデータセンターをはじめとする産業分野の脱炭素化が急務となる中、同地域のプロジェクト開発・投資機運の高まりが浮き彫りとなった。
東南アジアからXPRIZE入賞企業も集結 CDR技術の多様性と実装が焦点に
本サミットには、CDR関連のスタートアップ、大手金融機関、CDRクレジット購入企業、自治体関係者などが集結。特に注目を集めたのは、XPRIZEカーボンリムーバルで入賞したMati CarbonやArca、Takachar、Yuanchu、Mash Makesといった地域発スタートアップの存在であり、アジア太平洋地域が技術と資源の両面で「脱炭素の震源地」となり得ることを印象づけた。
ClimeFiのパトリシア・トート氏は「日本を含むこの地域にはバイオマス、土地、人材という3要素が揃っており、バイオ炭CDRにとって理想的な環境が整っている」と評価。現在、ClimeFiでは東南アジアでの新規プロジェクトを複数準備中で、XPRIZE関連ポートフォリオにも組み入れを検討していると述べた。
金融と市場形成が鍵 住友商事も大型CDR資金供給の議論に参加
5つのパネルセッションでは、資金供給、需要創出、バイオ炭、岩石風化(ERW)、新興技術の5テーマが設定された。住友商事の足立圭祐氏も登壇した「CDR資金の拡大」パネルでは、Standard CharteredやCarbon Removal Partners、スタンフォード大学のサステナブルファイナンス研究者らが、今後の資金供給モデルや投資家向けガイドライン整備の必要性を議論。
一方、CDRクレジットの需要創出を扱ったセッションでは、Carbonfuture、Climate Impact Partners、ClimeFiなどが、企業ニーズの明確化とクレジット市場の透明性確保の重要性を強調した。
バイオ炭と地域経済の接点も明示 アジア発のクレジット供給に期待感
バイオ炭CDRをテーマにしたパネルでは、Biomass ProjectsやGolden-Agri Resourcesなどが登壇し、コスト・技術・規制の課題を踏まえながら「農業と炭素市場の融合」による地域活性化の可能性が語られた。
中でもBiomass Projects CEOのリチャード・パターソン氏は「アジア太平洋こそが世界のCDR投資の中心地になりつつある。特に日本からの投資は目立つ」と述べ、地元経済・サプライチェーンを巻き込んだCDR拡大の現実的な絵を提示した。
APACがグローバルCDR市場を牽引する時代へ
サミットの閉会スピーチでは、Puro.earth副会長のアンティ・ヴィハヴァイネン氏が「APACの主導的役割は、もはや未来の話ではない」と述べた。ナスダックやXPRIZE、Climeworksといったグローバル企業の関心も強く、CDR市場の重心が確実にアジアへ移行しつつあることを裏付けたかたちだ。
参照:https://connect.puro.earth/apac-cdr-summit-2025