CO2除去の効率を大幅向上 クライメートテックOrigenが「ゼロエミッション生石灰」の実証に成功

村山 大翔

村山 大翔

「CO2除去の効率を大幅向上 クライメートテックOrigenが「ゼロエミッション生石灰」の実証に成功」のアイキャッチ画像

英国と米国を拠点とする気候テクノロジー企業のオリジン(Origen Power Limited)は2026年1月27日、米国ノースダコタ州のエネルギー・環境研究センター(EERC)において、独自開発の「ゼロエミッション生石灰キルン(焼成炉)」の実証試験に成功したと発表した。

この新技術は、生石灰の製造過程で発生するCO2を100%回収するだけでなく、その生石灰を直接空気回収(DAC)の吸収剤として活用するもので、炭素除去(CDR)コストの劇的な低減が期待される。

生石灰はセメントや鉄鋼の製造に不可欠な産業資材だが、その製造過程では原料の石灰石から大量のCO2が放出される。通常、1トンの生石灰を製造するごとに約1トンのCO2が排出されるが、オリジンの「オキシ燃料キルン」技術は、このプロセスエミッションをすべて回収・貯留する。今回の実証では、石灰石から生石灰への変換率が99%を超え、回収されたCO2の純度も98%を上回るなど、産業スケールでの運用に向けた高い性能を証明した。

さらに同社は、製造した生石灰を用いた統合型DACシステムの実証も同時に完了した。

キルンで製造された高反応性の生石灰粒子を、同社最大規模の空気接触装置に投入したところ、大気中のCO2を効率的に吸収し、再び石灰石へと戻るサイクルを確認した。この一連のプロセスは、ラボ環境での数値を実フィールドで再現したものであり、石灰石ベースのDAC技術が大規模展開可能な段階にあることを示している。

Carbon Credits.jp 作成

オリジンのベン・リドル=ターナー最高経営責任者(CEO)は「今回のマイルストーンは、我々の独自技術が商業展開可能なレベルにあることを証明するものだ。ゼロエミッション生石灰は、産業部門の脱炭素化と炭素除去の両面で基礎となる技術になる」と述べた。同社は2025年1月に1,300万ドル(約19億5,000万円)のシリーズA資金調達を完了しており、今回の成果を受けて商業化を加速させる。

今後はエンジニアリング大手のハッチ(Hatch)と協力し、2026年初頭までに基本設計(pre-FEED)を完了させる計画だ。

これにより、年間最大30万トンの生石灰を製造する初の商業施設の建設に向けた、詳細なコスト見積もりと拠点選定に入る。2026年内には建設候補地を決定し、詳細設計の段階へと移行する予定となっている。

今回のオリジンの実証成功は、単なる「工場の脱炭素化」に留まらない。

既存のDAC技術の多くが巨大なファンで空気を吸い込み、高額な化学吸収剤を使用するのに対し、オリジンは「既存の産業インフラ(キルン)」と「安価な石灰石」を組み合わせた点が戦略的だ。

特に注目すべきは、生石灰が鉄鋼やセメントといった「排出削減困難(ハード・トゥ・アベイト)」なセクターの必須材料である点。オリジンのモデルが確立されれば、これらの工場自体が「炭素の吸収源」へと変貌する可能性がある。

クレジット創出の観点では、石灰石という潤沢な資源を用いることで、除去コストを1トンあたり100ドル(約1万5,000円)以下に抑える「聖杯」への現実的な道筋が見えてきた。

参考:https://www.origencarbon.com/news/origen-eerc-demo/