ノルウェーのハフスルンド・セルシオは4月1日、廃棄物発電所にCO2回収装置を後付けする世界初のプロジェクトを開始すると発表した。再設計ではなく既存設備を活用することで、低コストで大規模な炭素除去を実現するモデルとされる。
このプロジェクトは、米国のカーボンリムーバル推進団体「Frontier」が支援。2029〜2030年の2年間で、10万トンのCO2回収する見込みで、Frontierの買い手企業は3,160万ドル(約48億円)を支払う。施設が対象とする排出量には、有機物由来の「バイオ起源CO2」とプラスチックなどの「化石由来CO2」があり、両方の排出に対応する。
同社のオスロ郊外の発電所では年間35万トンの廃棄物を処理し、電力や熱に再利用している。回収したCO2は船で「ノーザンライツ」地質貯留施設まで運ばれ、永久貯蔵される予定だ。単一施設としては、年間最大17.5万トンのバイオ起源CO2を削減できると見込まれており、同量の化石由来CO2にも対応可能とされる。
欧州では廃棄物発電が埋立処分の代替として普及しており、現在約500カ所の施設が稼働中。この技術が広がれば、2050年までに年間4億トン規模のCO2除去が可能になると試算されている。特に焼却対象の廃棄物はリサイクル不能な残渣であり、適切に処理しなければメタンを発生させる恐れがある。発電を通じて温室効果ガスを抑えながらエネルギーを得る方法として有効だ。
このプロジェクトは、ノルウェー政府の「ロングシップ」支援のもと、市が出資し、民間企業が排出権を購入するという官民連携により成立。参加企業には、Stripe、Google、Shopify、H&M、JPモルガンなどが名を連ねる。
ハフスルンド・セルシオの炭素市場責任者ジャニッケ・ビェルコース氏は、「このプロジェクトはヨーロッパ全体で繰り返せるモデルになる」と期待を示した。