ナイジェリアのボラ・ティヌブ大統領は2026年1月14日、アラブ首長国連邦で開催中の「アブダビ・サステナビリティ・ウィーク(ADSW)」において、同国の炭素市場枠組みを本格始動させたと発表した。
この新戦略により、今後10年間で年間25億ドル(約3,750億円)から30億ドル(約4,500億円)の収益創出を目指す。国家主導の透明性の高い市場インフラを整備することで、低炭素分野への国際投資を呼び込む狙いだ。
今回の発表の柱となるのは、「国家炭素市場活性化政策(NCMAP:National Carbon Market Activation Policy)」の採択と「国家炭素登録簿」の立ち上げである。これらは排出量の測定・報告・検証(MRV)体制を強化し、投資家保護を確実にするための基盤となる。ティヌブ大統領は演説で、「ナイジェリアは開発の好機の中心にいる」と述べ、炭素市場が気候変動対策と経済成長を両立させる中核であることを強調した。
同政府は実行力を担保するため、2025年10月に枠組みを正式承認し、20億ドル(約3,000億円)規模の「気候変動基金」を稼働させている。対象となるプロジェクトは、森林保全、再生可能エネルギー、クリーンな調理用コンロ、持続可能な農業など多岐にわたる。これらを通じて創出されるカーボンクレジットは、国内取引だけでなく国際市場での売買も視野に入れている。
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資金調達面では、年間250億ドル(約3兆7,500億円)から300億ドル(約4兆5,000億円)の気候資金を解禁するための投資計画を策定した。ナイジェリア政府機関である「ナイジェリア主権投資庁(NSIA)」による5億ドル(約750億円)の分散型再エネ基金や、世界銀行による7億5,000万ドル(約1,125億円)のクリーン電力アクセス支援事業(DARES)などが既に動き出している。
さらに、ナイジェリアとアラブ首長国連邦(UAE)は「包括的経済連携協定(CEPA)」の交渉を完了した。これにより、再生可能エネルギーや気候変動に配慮したインフラ分野での協力が加速する見通しだ。ティヌブ大統領は、リチウムなどの重要鉱物の国内加工を含むグリーン工業化への投資も呼びかけている。
今後の焦点は、2月にラゴスで開催される投資会議「インベストピア」に移る。ここで具体的かつ大規模なグリーンプロジェクトの契約締結が進むかが、ナイジェリアがアフリカにおける気候金融のハブとしての地位を確立できるかの試金石となる。
今回のナイジェリアの動きは、単なる一国の市場整備に留まらない。
これまでボランタリー市場に依存し、信頼性の確保が課題だったアフリカのカーボンクレジットを、国家が制度的に保証する高インテグリティな商品へと脱皮させる重要なステップである。
日本企業にとっても、パリ協定6条に基づくクレジット調達や、途上国支援を通じたESG投資の文脈で、ナイジェリアは無視できない存在となるだろう。特に国家登録簿の整備は、二重計上リスクを排除したい国際投資家にとって強力な安心材料となる。
今後、同国が掲げる年間30億ドルの収益目標が達成されるかどうかは、供給されるクレジットの質が国際基準(ICVCMなど)をいかに満たせるかにかかっている。


