マイクロソフト(Microsoft)は10月29日、カナダの炭素除去(CDR)企業アルカ(Arca)と長期炭素除去契約(オフテイク契約)を締結し、今後10年間で約30万トンの耐久型CDRを購入すると発表した。契約金額は非公表だが、規模としては同社がこれまで締結したCDR契約の中でも最大級となる。
今回の契約は、産業鉱物化と呼ばれる手法による炭素除去の商業化を後押しするものである。アルカは鉱山や製鉄業の副産物であるアルカリ性廃棄物を利用し、大気中のCO2を安定した炭酸塩鉱物として永久固定化する技術を持つ。同社は2025年、カナダ国内の稼働中鉱山で初のフルスケール実証を完了し、今後は年間100万トン規模のプロジェクト展開を目指している。
アルカのポール・ニーダム最高経営責任者(CEO)は「マイクロソフトとの合意は、産業鉱物化がスケール可能で耐久性のある炭素除去の有効な道であることを実証した。鉱業廃棄物を活用することで、廃棄物リスクを減らし、地域社会に新たな雇用も生み出す」と述べた。
マイクロソフトの二酸化炭素除去プログラム責任者フィル・グッドマン氏は、「アルカは科学的知見と実証実績を兼ね備えたパートナーであり、この協定により当社のCDRポートフォリオは拡充する。鉱物化はスケーラブルで恒久的な除去経路だ」とコメントした。
カナダのティム・ホジソン天然資源相も、「アルカのような企業がカナダの技術力を世界の脱炭素市場でリーダーシップに変えている。炭素除去技術は気候変動対策の戦略的手段であり、地域経済に良質な雇用ももたらす」と述べた。
アルカの技術は、地表にすでに存在する数十億トン規模の産業廃棄物を活用し、追加的な土地・水・エネルギー投入をほとんど必要としない。生成された炭酸塩鉱物は1万年以上の耐久性を持ち、測定・報告・検証(MRV)システムで第三者が監査することで透明性を確保している。
マイクロソフトは2030年までに自社の累積排出を上回る炭素を除去する「カーボンネガティブ」目標を掲げており、これまでに多様なCDR技術への投資を拡大している。今回のアルカとの契約は、その中でも鉱業系CDRの柱を築くものとなる。
アルカは20年以上の学術研究と30社超の鉱山企業との共同実証を経て設立された。今後はマイクロソフトの長期コミットメントを背景に、北米・アジアでの新規プロジェクト立ち上げを視野に入れる。
 
							 
			 
		 
				 
				 
				 
				 
				 
				 
				