米ミシガン州が石油大手を提訴 「再生エネ抑制」は独占禁止法違反と主張

村山 大翔

村山 大翔

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ミシガン州のダナ・ネッセル司法長官は2026年1月23日、石油・ガス大手および業界団体が「カルテル」を形成し、再生可能エネルギーへの移行を違法に抑制したとして、連邦独占禁止法(アンチトラスト法)に基づき米連邦地方裁判所に提訴した

同州は、被告らが電気自動車(EV)やバッテリー技術の普及を阻害し、化石燃料への依存を強制することで、エネルギー価格の不当な吊り上げと炭素除去(CDR)技術への投資停滞を招いたと主張している。

気候変動に関連する損害賠償ではなく、競争阻害を軸とした独禁法での提訴は全米で初の試みとなる。

被告として名指しされたのは、エクソンモービル(ExxonMobil)、シェブロン(Chevron)、BP、シェル(Shell)の4社と、業界団体の有力組織であるアメリカ石油協会(API)だ。訴状によると、これら被告は数十年にわたり「違法な共謀」を行い、再エネの生産抑制やEVの市場参入を遅らせることで、ミシガン州内の家庭用および輸送用エネルギー市場での支配力を維持したとされる。州側は、不当に得た利益の没収や3倍の損害賠償、および将来的な反競争的行為の差し止めを求めている。

具体的な妨害工作として、エクソンモービルが1970年代後半に開発済みだったハイブリッド車のプロトタイプを市場に出さず「お蔵入り」させたことや、シェブロンがニッケル水素電池の特許を取得し、ライセンス制限や訴訟を通じて競合他社を排除した事実が挙げられた。さらに、石油・ガス気候イニシアチブ(OGCI)などの組織を通じ、資本を再エネから遠ざけ、化石燃料の継続使用を前提とした技術へ意図的に誘導したと断じている。

エネルギー価格への影響について、ネッセル長官は「現在のコスト高は自然な経済インフレではなく、競争よりも自社の利益と支配を優先した企業の強欲によるものだ」と述べた。州側は、本来であれば再エネへの移行により抑制されるはずだった炭素排出量が増大し、それに伴う気候変動適応コストや保険料の上昇が州経済に多大な損害を与えていると指摘。これらはカーボンクレジット市場における供給の歪みや、真にクリーンな炭素除去技術の社会実装を遅らせる要因になったとの見方を示している。

これに対し、業界側は激しく反発している。

アメリカ石油協会(API)とシェブロンは、本訴訟を「根拠のない組織的なキャンペーン」と批判。エネルギー政策のあり方は法廷ではなく連邦議会で決定されるべきだと反論した。

また、トランプ政権下の司法省は2025年、州主導の気候変動訴訟は「大気浄化法(Clean Air Act)」によって連邦政府が専権を持つものであり、州の権限を越えているとの見解を示しており、今回の訴訟の行方にも影響を与える可能性がある。

本件を担当するのは、環境問題や企業不正の訴訟で実績のあるシャー・エドリング法律事務所(Sher Edling LLP)などの外部チームで、州との成功報酬型契約に基づき調査を進めてきた。

当初は気候変動の欺瞞に関する調査から始まったが、最終的に「米国史上最も成功した独占禁止法違反の共謀の一つ」を裏付ける証拠を発見したとしている。2026年を通じてミシガン州西部連邦地方裁判所で審理が継続される見通しで、他州が同様の法的戦略に追随するかどうかが今後の焦点となる。

もしミシガン州が勝訴すれば、エネルギー企業は独禁法回避のために、より透明性の高い、独立したCDR事業への投資を加速させざるを得なくなるだろう。

これは「企業のグリーンウォッシュ」を法的に定義し直す歴史的な転換点になる可能性がある。

参考:https://www.michigan.gov/ag/news/press-releases/2026/01/23/attorney-general-nessel-files-lawsuit-against-fossil-fuel-defendants