「土壌こそが収益源」再生型農業でカーボンクレジット創出へ、110億円規模の融資

村山 大翔

村山 大翔

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カナダの投資会社キー・カーボン(Key Carbon)とリトアニアの気候金融企業インソイル(InSoil)は10日、欧州の再生型農業を加速するため、1億ユーロ(約114億円)規模のパートナーシップを締結したと発表した。両社の共同声明によると、融資の主軸はインソイルの「ゼロ金利グリーンローン」で、中小規模農家への資金支援に特化する。

今回の枠組みには、1,000万ヘクタールに及ぶ農地の再生型転換と、3,500万トン超の二酸化炭素(CO2)吸収が見込まれる。さらにインソイルには、ロイヤルティ契約として370万ユーロ(約4.2億円)の出資が実行済みで、2026年までに事業領域の大幅な拡大が予定されている。

「土壌が解決策になる」 農家と市場を結ぶ両輪

インソイルは、以前の社名「ヘビーファイナンス(HeavyFinance)」から刷新し、農家にゼロ金利で融資する代わりにカーボンクレジットの分配を受ける独自モデルを展開している。これらクレジットは、再生型農業によるCO2固定を可視化し、民間のボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)で販売される。

キー・カーボンの欧州子会社「EUソイル・カーボン・コープ(EU Soil Carbon Corp)」は、技術・資金の両面で拡張を支援し、EUが進める「炭素除去認証枠組み(CRCF)」に準拠した高品質クレジット供給を目指す。

CEO同士が語る「資金と信頼の架け橋」

インソイルのラモナス・ノレイカCEOは、「気候変動や規制の波に直面する欧州農家にとって、持続可能性と収益性の両立は不可避だ。本提携により支援対象を拡大し、科学的信頼に基づく市場価値を創出できる」と述べた。

一方、キー・カーボンのルーク・レスリーCEOは「企業のカーボンクレジット需要は、“地域ベースかつ実質的な除去型”へと進化している。インソイルの知見とネットワークは、その供給基盤として理想的だ」と語った。

調達と拡張の実績 VCMの成長と重なる

インソイルはこれまでに約8,000万ユーロ(約91億円)を3,000超の農家に融資済み。新規資金により、より広範な土地における炭素隔離と生物多様性モニタリングが可能となる。

測定・報告・検証(MRV)体制も強化され、ラボ級の土壌分析、リモートセンシング、農業工学による監査などが組み合わさる。

本パートナーシップは、EUの農業政策(CAP)や炭素認証制度(CRCF)との親和性が高く、再生型農業におけるファイナンス・技術両面でのモデルケースと位置付けられる。民間主導による「炭素の経済化」が進む中、同様の仕組みが他地域にも波及する可能性がある。

参考:https://key-carbon.com/key-carbon-insoil-announce-milestone-e100m-partnership-for-european-farmers-pursuing-regenerative-agriculture/