Gold Standardが「微生物による炭素鉱物化」手法を公開 農地での永続的なCO2除去を促進

村山 大翔

村山 大翔

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カーボンクレジットの主要な認証機関であるゴールド・スタンダード(Gold Standard)は1月23日、科学主導型企業のアンデス(Andes)と共同で開発した、微生物による二酸化炭素(CO2)の鉱物化に関する新手法を公開した。

この手法は、既存の農地の土壌に有用な微生物を導入し、大気中のCO2を捕捉して無機炭素へと変換・固定することで、数百年から数千年にわたる長期的な炭素除去(CDR)を可能にする。今回の発表により、農業セクターにおける高付加価値なカーボンクレジット創出の道が新たに拓かれた。

本手法は、特定の土壌微生物が植物の根と相互作用し、大気中から吸収したCO2を土壌無機炭素(SIC)へと変換するプロセスを対象としている。この炭素鉱物化プロセスは、大気中の過剰な排出量削減に寄与するだけでなく、土壌中のミネラル濃度を高めることで、農地の健康状態や作物の成長を促進する効果も期待される。カーボンクレジットの認証期間は最大10年間に設定されており、厳格な科学的根拠に基づいた運用が求められる。

プロジェクトの信頼性を担保するため、直接的な土壌サンプリングに基づく「測定・再測定」アプローチが採用された。これにより、微生物の活動によって増加した土壌無機炭素の量を正確に監視・検証する。また、微生物を投入しない対照区を設置して微生物固有の影響を分離するほか、収穫量の減少を招いた場合にはクレジットを発行しないといった食料安全保障への配慮も組み込まれている。なお、今回の対象は土壌無機炭素に限定されており、土壌有機炭素(SOC)の改善分はスコープに含まれていない。

適用範囲については、広範な作物や気候帯を対象とした世界中での活用が可能であるが、湿地、草地、灌漑地、および森林での使用は禁じられている。開発者はプロジェクトの開始前に、選択した作物と微生物の組み合わせが大気中のCO2を固定できることを、研究室およびフィールド調査で事前に実証する必要がある。

パリ協定に基づく指針に沿った今回の新手法は、自然をベースとした気候変動対策において、高い整合性と永続性を備えた新たな解決策を提示するものだ。今後、農地を活用した高品質なCDRプロジェクトが、グローバル市場でどのように展開されるかが注目される。

今回のゴールド・スタンダードによる発表は、農業由来の炭素クレジットにおける「質の転換点」になるだろう。

これまで農地の炭素貯留といえば、不耕起栽培などによる「土壌有機炭素(SOC)」の増加が主軸であった。しかし、有機炭素は微生物による分解や耕作放棄によって再び大気中に放出される「リバース(逆戻り)」のリスクが常に懸念されてきた。対して、今回発表された「無機炭素(SIC)」への変換、すなわち鉱物化は、石のように固着させるため永続性が極めて高い。

これは、ボランタリーカーボンクレジット市場において現在最も求められている「除去(Removal)の永続性」というニーズに合致する。企業のネットゼロ達成において、森林保全(回避)から技術的・自然的な永久除去へのシフトが進む中、農地という広大な面積を「永続的な貯蔵庫」に変えるこの手法は、供給不足が続く高品質クレジットの新たな供給源となる可能性がある。

今後は、この微生物技術を導入する際のコスト対効果と、実際にどれだけの農家が食料安全保障のガードレールをクリアしながら参入できるかが、普及の鍵を握ることになるだろう。

参考:https://globalgoals.goldstandard.org/458_paa-m400-04_microbial-carbon-di-oxide-mineralisation/