再生可能燃料企業の米ジーヴォ(Gevo)は11月3日、ノースダコタ州リチャードトンのエタノール生産・炭素回収・貯留(CCS)拠点で生成したCDRクレジットを、スウェーデン系炭素除去企業ビオレクロ・ノースアメリカ(Biorecro North America LLC)へ初めて納入したと発表した。取引は2025年9月に締結した5年間の販売契約に基づくもので、総額約2,600万ドル(約39億円)の収益が見込まれる。
今回のCDRクレジットは、高信頼性を重視するピューロアース(Puro.earth)基準の認証を受けたもので、ジーヴォにとってCDRクレジット事業への初の本格参入を意味する。同社はこれまでエタノール、タンパク質、副産物油、税控除などを中心に収益を上げてきたが、新たにCDRを「共生成価値」として事業ポートフォリオに加えることで、カーボンビジネスの拡大を狙う。
ジーヴォのチーフビジネスデベロップメント責任者、アレックス・クレイトン氏は「当社のクラスVI型炭素貯留井は2022年6月の稼働以来、年間約16万5,000トンのCO2を地中に封じ込め、累計で55万トン以上を貯留してきた。ピュロ・アースによって『1,000年以上の永続性』を持つ世界唯一のエタノール生産由来CCS井として認証された」と述べた。
同社の北ダコタ施設は2022年に稼働を開始し、バイオエネルギー由来炭素回収・貯留(BECCS)として世界でも数少ない産業規模のCDRプロジェクトの一つである。地質的に適したリチャードトン地域に位置し、年間最大100万トンのCO2を安全に地中貯留できる能力を持つ。
ゲボ社は今回のCORC納入を「炭素の経済価値を最大化する新たな道」と位置づける。同社チーフビジネス責任者のポール・ブルーム氏は「炭素を単独でクレジット(CORC)として販売するか、低炭素燃料市場向けのエタノールと束ねて販売するかを最適化することで、収益性を高めることができる」と語った。
一方、ビオレクロはBECCS分野で15年以上の経験を持つ世界的開発企業であり、発電、製紙、バイオ燃料施設など既存の産業に炭素除去技術を統合している。同社は欧州と北米を中心に複数のプロジェクトを展開しており、今回の提携により北米市場での商用CDRクレジット供給を拡大する狙いだ。
ピュロ・アースはフィンランド発の高品質CDR認証制度であり、耐久性と透明性を重視したCORC市場を形成している。ゲボ社が同認証を受けたことにより、エタノール由来のCO2貯留を「長期的・実証的な炭素除去」として位置づける動きが加速する可能性がある。
米国内では、再生燃料製造と炭素貯留を組み合わせた「BECCS」型のプロジェクトが増加傾向にあり、低炭素航空燃料(SAF)や再生ディーゼルなどの製造過程で発生するバイオCO2を活用したCDR事業への関心が高まっている。今回の案件は、炭素除去クレジットを持続的な収益源とする新たなビジネスモデルの実証例といえる。
ジーヴォは今後、北ダコタ拠点で開発中の大規模アルコール・トゥ・ジェット燃料(ATJ)製造施設にもCCS技術を組み込み、SAF市場とCDR市場を連携させる方針を示している。次回納入分のCORCは2026年内に実施される見通しだ。