Deloitte NSE、「土壌カーボンクレジット」に出資 メキシコ北部の草原再生支援で脱炭素加速

村山 大翔

村山 大翔

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英デロイト・ノース&サウス・ヨーロッパ(Deloitte NSE)は11月5日、米カリフォルニア拠点の炭素除去(CDR)企業ブーミトラ(Boomitra)から高品質な土壌炭素除去由来のCDRクレジット1万8,000トン超を購入すると発表した。対象はメキシコ北部の草原再生プロジェクトで、地域牧場主らの持続可能な放牧転換を支援する。2040年までのネットゼロ実現に向けたデロイトの戦略の一環であり、同社の「バリューチェーン外」投資として注目される。

デロイトNSEはこれまで、英ウィリアム王子が創設した環境賞「アースショット賞(The Earthshot Prize)」の審査を独立支援しており、ブーミトラとは2023年に同賞「気候を修復せよ」部門での受賞を機に関係を深めてきた。今回の契約では、ブーミトラが主導する「メキシコ北部草原再生プロジェクト(Northern Mexico Grassland Restoration Project)」を通じて、158の牧場が炭素蓄積型の放牧・水管理に移行し、土地劣化を反転させている。

ブーミトラの創業者兼最高経営責任者(CEO)アーディス・ムールティ氏は、「アースショット賞は単なる表彰ではなく、再生・地域支援・実質的な気候貢献を共に追求する仲間と出会う場となった」と述べた。そのうえで、「デロイトNSEが審査支援から実際のクレジット購入へと踏み込んだことは、生産者主導の炭素除去と生態系再生を後押しする重要な一歩だ」と強調した。

このプロジェクトは、国際認証団体ベラ(Verra)の最新土壌炭素手法「VM0042」に基づき検証されており、デロイトNSEと気候対策専門機関クライメート・インパクト・パートナーズ(Climate Impact Partners)が独自のデューデリジェンスを実施して品質を確認している。

同パートナーズのシェリ・ヒコックCEOは、「デロイトNSEは、企業が自社のバリューチェーンを超えて地域主体の信頼性ある気候解決策を支援する模範を示した」と評価。「高品質なCDRは、ネットゼロ達成を加速させるだけでなく、人と自然の双方に実質的な恩恵をもたらす」と述べた。

ブーミトラは人工知能(AI)と衛星リモートセンシングを活用し、農地や草原の土壌炭素吸収量を測定・拡大するプロジェクト開発企業である。現在、南半球を中心に10万人超の農牧業者と連携し、500万エーカー(約200万ヘクタール)規模で炭素除去を推進している。プロジェクトはヴェラやソーシャルカーボンなど国際基準で検証され、パリ協定第6条に基づく二国間調整(対応調整)による取引資格も視野に入れる。

同社はまた、ボツワナで灌木侵食対策を兼ねたバイオマス炭素除去・貯留(BiCRS)事業を展開中で、長期的な炭素固定と生物多様性保全の両立を目指す。

一方、デロイトは2040年ネットゼロ目標を科学的根拠に基づき設定し、2024年にSBTiの認証を取得している。同社は自社の排出削減と並行して、カーボンクレジット市場を活用した「高信頼性の除去投資」を進める方針を明確にしている。

ブーミトラとの今回の提携は、企業の脱炭素戦略における土壌炭素クレジットの役割を具体化するものであり、特にアースショット賞が目指す「再生型経済」への実装事例として国際的な注目を集めている。

参考:https://boomitra.com/deloitte-nse-purchases-soil-carbon-credits-from-boomitra/#:~:text=Boomitra%2C%20a%20soil%20carbon%20project,quality%20soil%20carbon%20removal%20credits.