ドイツのクリーンテック企業であるコア・リアクティブ(Co-reactive)は1月28日、シードラウンドで650万ユーロ(約10億6,000万円)の資金調達を完了したと発表した。
同社は回収した二酸化炭素(CO2)を鉱物と反応させ、セメントの代替原料となる「ネガティブエミッション素材」を製造する技術を持つ。今回の資金調達により、2026年第2四半期までに年産1,000トン規模の実証プラントを稼働させ、排出削減が困難なハード・トゥ・アベート分野の筆頭であるセメント業界の脱炭素化を急ぐ。
今回の資金調達ラウンドは、ドイツ最大の官民ファンドであるハイテク・グリュンダー・フォンズ(High-Tech Gruenderfonds:HTGF)がリード投資家を務めた。NRWバンク(NRW.BANK)やAFIベンチャーズ(AFI Ventures)などのベンチャーキャピタルのほか、気候変動技術に精通したエンジェル投資家らが参加している。また、ドイツ連邦経済・気候保護省(Federal Ministry for Economic Affairs and Climate Action:BMWK)による産業・気候連邦助成金(BIK)プログラムからも財政支援を受けている。
コア・リアクティブは2024年、独アーヘン工科大学(RWTH Aachen University)のスピンオフとして設立された。
同社が開発した独自の「連続鉱物化プロセス」は、回収されたCO2をオリビン(かんらん石)や、製鋼工程で発生する電気炉スラグ(EAF)および転炉スラグ(BOF)などの鉱物と反応させる。このプロセスを経て生成されるCO2ネガティブ補助セメント質材料(CO-SCMs)は、セメント製造時のクリンカー(中間製品)使用量を削減し、製品全体の炭素集約度を劇的に低下させる。
この技術の最大の特徴は、既存のセメントや建築資材の生産ラインに直接組み込める「ドロップイン」型である点にある。
生成されたCO-SCMsは、従来のセメントの圧縮強度を維持、あるいは向上させるだけでなく、耐久性を高める効果も確認されている。現在、石炭火力発電の廃止や製鉄プロセスの転換に伴い、従来の補助材料であったフライアッシュ(石炭灰)や高炉スラグが世界的に不足し、価格が高騰している。同社の技術は、これらの代替となる持続可能な供給源としても期待されている。
コア・リアクティブの共同創業者兼最高経営責任者(CEO)であるアンドレアス・ブレーメン(Andreas Bremen)氏は「資金調達と学術研究は土台に過ぎないが、真の変革は起業家としての行動によってのみ達成される。今回の支援により、1,000トン規模の実証プラントで性能を証明し、産業界とともに大規模展開に向けた準備を整える力が得られた」と述べた。同氏はさらに、現在求められている解決策を構築することで、将来的に産業規模でのインパクトを生み出す意欲を示した。
今後の計画として、同社は2026年第2四半期までに年産1,000トン規模のデモプラントを稼働させる。さらに、2027年以降はセメント工場や製鉄所に隣接する形で、バイオ由来またはプロセス由来のCO2を直接処理する「数万トン規模」の初号機の建設を目指す。最終的には、年間10万トンから30万トン規模の商業プラントへとスケールアップし、CO2を価値ある産業資源へと転換する循環型モデルを確立する方針だ。
今回のコア・リアクティブによる調達は、単なる「セメントの低炭素化」に留まらず、炭素除去(CDR)技術としての「鉱物化」が商業フェーズへ移行しつつあることを象徴している。
特に注目すべきは、彼らが「副産物(スラグ)」を原料に活用している点だ。これは、鉄鋼業界の脱炭素化に伴う既存副産物の供給不足という「負の連鎖」を、新たなCDR資源の供給という「正の連鎖」に変える戦略である。
日本においても、セメント業界は産業部門のCO2排出量の約1割を占めており、CCU(炭素捕獲・有効利用)技術への関心は極めて高い。
同社のドロップイン技術が証明されれば、既存設備への投資を抑えつつカーボンクレジットの創出やScope1削減を狙う日本のセメント大手にとっても、強力な提携パートナー候補となるだろう。
今後は、2026年のデモプラント稼働における「炭素固定の永続性」の認証取得が、クレジット価値を左右する鍵となる。


