チリ政府は2025年12月13日、パリ協定第6条に基づく炭素市場への参加ルールを定めた新たな国内規制を官報で公布した。翌14日に次期大統領を決める決選投票を控える中、退任間近のガブリエル・ボリッチ政権が、1年以上の議論と会計検査院による4カ月超の審査を経て、カーボンクレジットの国際移転(ITMO)を可能にする法的枠組みを成立させた形だ。
「駆け込み」での制度確立
今回の規制公布は、ボリッチ政権にとって任期最後の重要施策の一つとなる。同規制は、チリ国内で創出された排出削減量や吸収量を、パリ協定第6条の下で国際的に移転可能な成果(ITMO)として取引するための明確なルールを定めたものである。これにより、チリはパリ協定メカニズムに対応した専用の国内枠組みを持つ、世界でも数少ない国の一つとなった。
規制の詳細は、12月13日付の官報(Diario Oficial)にて確認された。これは、国を二分する激戦となった大統領選の決選投票の前日にあたる。
政治的背景と市場への影響
今回のタイミングは、チリの環境政策における重要な転換点を示唆している。12月14日の選挙は、極右のホセ・アントニオ・カスト(José Antonio Kast)氏と、中道左派のジャネット・ハラ(Jeannette Jara)氏による事実上の一騎打ちとなっており、次期政権の方針次第では環境政策の優先順位が変わる可能性があった。
現左派政権によるこの「駆け込み」での規制化は、次期政権の思想にかかわらず、チリが国際炭素市場のプレイヤーとして留まるための既成事実を作ったとも解釈できる。市場関係者は、南米有数の経済国であるチリが国際ルールに準拠したカーボンクレジット供給国として体制を整えたことを、グローバル・カーボンマーケットにおける重要な進展と評価している。
この規制により、チリ国内の森林保全プロジェクトや再生可能エネルギー事業から生じるカーボンクレジットが、他国のNDC達成や、CORSIA向けに正式に輸出される道が開かれることになる。新政権下での実際の運用開始時期に注目が集まる。
参考:https://www.diariooficial.interior.gob.cl/publicaciones/2025/12/13/44323/01/2739786.pdf

