米カーボン・ダイレクト(Carbon Direct)は2026年2月19日、炭素除去(CDR)産業を「約束の購入」から「成果の調達」へと移行させるための新指針「CDR 2.0」を発表した。
本白書は、プロジェクトが最終投資決定(FID)に至らず資本が停滞している現状を打破するため、5つの柱からなる商業的規律を提唱している。
停滞する「CDR 1.0」の限界
IPCCによれば、1.5℃目標の達成には2100年までに1,000億〜1兆トンのCDRが必要とされる。しかし、従来の「CDR 1.0」フェーズでは、排出回避型と除去型のカーボンクレジットが混同され、市場の信頼性が損なわれてきた。
2020年から2024年にかけては、1億ドル(約150億円)規模の詐欺疑惑を含む複数の不祥事が露呈し、買い手の意欲を減退させている。
また現在も、多くのプロジェクトが資金調達や技術実証の段階で足踏みしており、供給不足と配信リスクが深刻な課題となっている。
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「CDR 2.0」を支える5つの柱
カーボン・ダイレクトは、エンジニアリングおよびハイブリッド型のCDRプロジェクトを成功に導くための条件として、以下の5つの柱を提示した。
- 技術的成熟度(Technical Readiness)
商業規模のプロジェクトには、技術成熟度(TRL)8以上の確立された技術を採用すること。 - プロジェクト保証(Project Assurance)
専門家によるフロントエンド・エンジニアリング・デザイン(FEED)の実施や独立した監視を行い、インフラ投資と同等の規律を導入すること。 - 規格化(Standardization)
単なる「原則」ではなく、商業的な裏付けとなる明確な「技術仕様」へと移行すること。 - 銀行融資可能な契約(Bankable Contracting)
リスクに応じた資本構成(エクイティやデット)を構築し、法的拘束力のあるオフテイク(長期引取)契約を締結すること。 - 取引の簡素化(Transactional Ease)
標準契約書の普及やシンジケート・インフラの構築により、取引コストと摩擦を軽減すること。
実力主義の市場へ
同社は、プロジェクト予算の1%未満で導入可能な外部専門家による「プロジェクト保証」が、特に初号機プロジェクトの成否を分けると指摘している。また、買い手に対しては、法的拘束力のない意向表明書(LOI)ではなく、価格・量・納期を確定させた「テイク・オア・ペイ(受諾、さもなくば支払い)」契約の採用を推奨している。
これにより、CDRを単なるボランタリーな活動から、信頼性の高い工業的パフォーマンスへと進化させる狙いがある。
日本企業においても、ネットゼロ達成に向けて従来の森林由来クレジットから、DACやBECCSといった高永続性CDRへの関心が急速に高まっている。
しかし、本報告が指摘するように、技術への過信や曖昧な契約は大きな納期リスクを孕む。
「CDR 2.0」が示すチェックリストは、日本企業が将来のコンプライアンス市場を見据え、質の高いCDRポートフォリオを構築する際の重要なデューデリジェンス基準となるだろう。
参考:https://www.carbon-direct.com/research-and-reports/cdr-2.0-five-pillars-of-successful-project-deployment-and-delivery
