米Carbaが9億円の資金調達、「1,000年耐久」バイオ炭CDRクレジットのアジア展開を加速

村山 大翔

村山 大翔

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バイオ炭を用いた炭素除去(CDR)技術を開発する米カルバ(Carba)は12月3日、600万ドル(約9億円)の資金調達を完了したと発表した。今回のラウンドは、ラシーン・キャピタル・マネジメント(Rusheen Capital Management)とキャノピー・ジェネレーションズ・ファンド(Canopy Generations Fund)が主導した。

同社は独自の熱分解技術と廃棄物処分場への埋没を組み合わせることで、1,000年以上の耐久性を持つ高品質なCDRクレジットを生成する。今回の資金調達により、米国内でのプロジェクト拡大に加え、東南アジアおよび東アジアでの事業展開を本格化させる。

ミネソタ州を拠点とするカルバは、廃棄バイオマスや有機性廃棄物を独自の「自熱式熱分解リアクター」で安定したバイオ炭に変換し、それを埋め立て処分場に埋没させることで炭素を半永久的に固定する技術を持つ。このプロセスで生成されるカーボンクレジットは認証機関、アイソメトリック(Isometric)により、1,000年以上の耐久性が認証される見通しだ。

同社は現在、ミネソタ州バーンズビルで最初の商用プロジェクトの立ち上げを進めている。電力会社の送電線管理から排出される廃棄バイオマスを原料とし、生産されたバイオ炭を同地の衛生埋め立て処分場に埋没させる計画だ。2025年第4四半期に稼働を開始し、2026年第1四半期には最初のアイソメトリック認証済みクレジットの引き渡しを予定している。

カルバはこれまでに、米マイクロソフト(Microsoft)と5年間で4万4,000トンのCDRクレジットを供給する長期オフテイク契約を締結しているほか、米エネルギー省(DOE)の「カーボン・ネガティブ・ショット」プログラムから700万ドル(約10億5,000万円)の助成金対象に選定されるなど、官民双方から高い評価を得ている。

今回の調達資金は、こうした米国内での実績を基盤とした国際展開にも充てられる。特にアジア市場においては、東南アジアおよび東アジア地域でのサプライチェーン統合と戦略的パートナーシップの構築を進める方針だ。アジア太平洋地域における企業や政府からのクレジット需要の高まりに応える狙いがある。

また、カルバの技術は単なるCDRにとどまらないコベネフィットも注目されている。埋め立て地に埋没されたバイオ炭は、悪臭や毒素、さらには地下水汚染の原因となるPFAS(有機フッ素化合物)の吸着フィルターとして機能するほか、強力な温室効果ガスであるメタンの発生を抑制する効果も期待される。同社は今後、こうした環境改善効果を実証する科学的研究も進めていくとしている。

カルバのCEOであるアンドリュー・ジョーンズ氏は、「既存の埋め立てインフラと地域で調達可能な廃棄バイオマスを活用する我々の分散型モデルは、迅速かつ費用対効果の高いスケーリングが可能だ」と述べている。

参考:https://carba.com/press/carba-raises-6m-investment-round