ノルウェーの炭素回収技術プロバイダーであるキャプソル・テクノロジーズ(Capsol Technologies)は12月8日、米国の主要電力会社と、同社独自の炭素回収(CCS)システム「CapsolGT®」を用いた初の商業規模となる低炭素ガス発電所の開発に向け、独占的な覚書(MoU)を締結したと発表した。
蒸気不要で95%以上のCO2を回収
今回の合意に基づき、キャプソル・テクノロジーズは提携パートナーや投資家と協力し、プロジェクトの最終投資決定(FID)に向けた詳細検討を進める。
導入される「CapsolGT®」は、シンプルサイクルガスタービン向けに特化して設計されたCCS技術である。最大の特徴は、タービンの排気から直接CO2を回収する際、廃熱を利用して追加の電力を生成する点にある。これにより、外部からの蒸気供給や、複雑なコンバインドサイクルへの設備改修を必要とせず、95%以上のCO2回収率を実現するという。
同社のフィリップ・スタガット最高製品責任者(CPO)は声明で、「米国の電力市場において、脱炭素化は経済性および信頼性とセットでなければならない」と指摘した上で、「CapsolGT®は既存のガスタービン発電所を脱炭素化するためのコストリーダーとなるよう設計されており、電力会社や大口需要家に、低炭素かつ需給調整可能な電力への実用的なルートを提供する」と述べた。
AI需要で高まる「低炭素な安定電源」への期待
米国では、天然ガスが依然として電力供給の主軸を担っている。2024年の米国における総発電電力量の約36%を天然ガスが占めており、今後も長期間にわたり主要なエネルギー源であり続けると見込まれている。
特に近年は、AIデータセンターの拡大により電力需要が急増しており、再生可能エネルギーだけでは賄いきれないベースロード電源や調整電源として、ガス火力の役割が再評価されている。しかし、気候変動対策の観点から排出削減圧力も同時に強まっており、発電能力を維持しながらCO2を削減できるCCS技術の実装が不可欠となっている。
今回のMoUには、対象となる初期プロジェクトに加え、当該電力会社が保有する他の既存発電所や新規開発案件への同技術の展開可能性を評価することも含まれている。キャプソル側は、今回のプロジェクトが進展すれば、北米市場における大規模な技術展開の足がかりになると期待を寄せている。

