「バイオ炭ブループリント」発行で資金調達の障壁を打破 バイオ炭事業者に送るCDRスケールアップ戦略

村山 大翔

村山 大翔

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炭素除去(CDR)技術であるバイオ炭のスケールアップを阻む最大の障壁は、資金調達にある。この課題を解決するため、Aヘルシアー・アース(A Healthier Earth)は、デベロッパー向けのガイダンス「バイオ炭・ブループリント(The Biochar Blueprint)」を2025年11月14日に発表した。同社は、専門家による知識と具体的な助言を組み合わせ、バイオ炭の市場規模が今後10年間で20億ドル(約3,091億円)以上に達すると予測される中、大規模で信頼性の高い投資を呼び込むための戦略を詳述している。

CDR市場で優位性を確立する

バイオ炭は、現在、信頼性、手頃な価格、および迅速な展開可能性において、主要なCDRソリューションとして市場で際立っている。CDRのデータプラットフォーム「CDR.fyi」においても、バイオチャーはサプライヤー・リーダーボードで優位性を保ち続けている。

しかし、科学的および技術的な準備が整っているにもかかわらず、バイオ炭産業が真のスケールを達成するための決定的な要素である「投資資本」が依然として不足している。

資金調達の主要5大障壁と具体的な助言

バイオ炭・ブループリント」は、開発者が直面する主要な5つの資金調達上の障壁を深く掘り下げ、それぞれの問題の概要と実用的な解決策を提示している。

  • オフテイク契約の設計:安定した収益源を確保するための契約構造に関する問題。
  • ボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)の取り決め:VCM内でのクレジット販売と取引の課題。
  • カーボンクレジットの価格設定とその他の収益源: バイオ炭販売や熱利用などの多様な収益化戦略。
  • 技術選定とリスク管理:信頼性の高い技術選びとプロジェクトのリスク最小化。
  • 文書化と規制コンプライアンス:許認可や認証プロセスにおける行政・規制上の負担。

投資家を惹きつけるための4つの視点

投資家を惹きつけるために、開発者は従来のバイオチャーの議論を超越した視点を持つ必要があると同ガイドは提言している。

具体的には、

  1. 「金融家のように考える(Think like a financier)」
    事業計画を金融の観点から提示し、彼らが求める利益やリスクリターンを示す。
  2. 「エンジニアのように売り込む(Pitch like an engineer)」
    バイオ炭生産の従来型かつ標準化された方法を強調し、技術的な堅牢性をアピールする。
  3. 「バイヤーとして交渉する(Negotiate as a buyer)」
    プロジェクト成功に不可欠な条件を明確に示し、買い手と対等な立場で交渉する。
  4. 「監査役のように準備する(Prepare like an auditor)」
    実行可能な行動計画と信頼できる目標を含む包括的なリスク管理計画を整備し、投資家や買い手の信頼を高める。

業界の主要ステークホルダーが連携

本ガイドは、法律、保険、認証、モニタリング・報告・検証(MRV)、投資などの分野で数十年の経験を持つ業界の専門家からのインサイトに基づいて作成された。主要な協力機関には、キタ(Kita)、マングローブ・システムズ(Mangrove Systems)、プーロ・アース(Puro.earth)、ベゼロ(BeZero)、グリーン・カーボン・ファクトリー(Green Carbon Factory)、フィリップ・リー(Philip Lee)、国際バイオチャー・イニシアティブ(International Biochar Initiative)、USバイオチャー・イニシアティブ(USBI)、カーボン・スタンダーズ・インターナショナル(Carbon Standards International)、スーパー・クリティカル(Supercritical)、およびレイノヴァ・パートナーズ(Reinova Partners)が含まれている。

Aヘルシアー・アースは、この「バイオチャー・ブループリント」を通じて、バイオ炭によるCDR市場の成熟を促進し、新たな市場投資の波を引き起こすことを目指している。

参考:https://puredc.com/2025/11/12/whitepaper-biochar-blueprint