「ASEAN共通カーボンフレームワーク」発足1年、「相互運用性」実証へ、COP30で新計画発表

村山 大翔

村山 大翔

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ブラジル・ベレンで開催中のCOP30において、アセアン共通カーボンフレームワーク(ACCF)は発足から1年の進捗を報告し、今後の具体的な行動計画を公表した。ACCFは、東南アジア地域全体で高信頼性な炭素市場を育成し、各国(アセアン加盟国)の排出削減目標と整合させることを目指す、業界主導の枠組みである。

発足から「具体的な作業計画」へ、地域的な原則を定義

ACCFは昨年(COP29)の覚書(MoC)を通じて設立され、マレーシア・カーボンマーケット協会(MCMA)、アセアン・カーボンマーケット連合(AACM)、シンガポール持続可能金融協会(SSFA)などの署名団体が主導している。タイのカーボン・マーケット・クラブ(CMC)やインドネシア・カーボン取引協会(IDCTA)も積極的に開発に参画している。

ACCF運営委員会のレナード・シュー(Renard Siew)議長は、「この1年でACCFはコンセプト段階から、より具体的な作業計画へと移行した」と述べ、単一の規制体制を押し付けるのではなく、「各国の進路を支援しつつ、より一貫性のある地域市場を構築するための共通原則と実用的な防護策(ガードレール)を定義することが目的だ」と強調した。

「パリ協定第6条との整合」と「市場インフラ」が鍵

ACCFの作業計画は、以下の3つの主要な柱に基づいている。

  1. 供給と需要(Supply and Demand)
  2. 市場インフラ(Market Infrastructure)
  3. 戦略的コミュニケーションと能力構築(Strategic Communications and Capacity Building)

これらに加えて、政策・規制の整合性とパイロットプロジェクトが横断的な優先事項として位置づけられている。特に、パリ協定第6条との整合性を図ること、そして、投資家や規制当局、コミュニティ間の信頼を高めるための相互運用可能なインフラの設計が重要課題とされた。市場の細分化を防ぎ、地域全体でクレジットが信頼性をもって流通する仕組みの確立が急務となっている。

相互運用性を試す「パイロット取引」を推進

今後の焦点としてACCFは、アセアン加盟国の参加拡大、規制当局との関与深化、ACCF原則の地域的な承認獲得を目指す。

さらに、相互運用性と市場インフラの選択肢を検証するためのパイロット実証取引を開始する計画を明らかにした。これは、デジタル台帳システムやクレジットの認証基準が、国境を越えてスムーズに連携できるかを実際に試すものである。

また、CMCのグロイタ・ナタラング(Gloyta Nathalang)会長は、ACCFの「コミュニケーションと能力構築」の取り組みを支援し、相互接続されたカーボン市場の実現に向けた意識向上と進捗報告を担う意向を示した。

ACCFの活動は、第57回アセアン経済大臣会合の共同メディア声明やASEAN資本市場フォーラムによるボランタリーカーボンクレジット市場(VCM)ガイダンスにも言及されており、地域における炭素市場開発の主要な要素として正式に認められつつある。

投資の呼び込みへ「明確な地域ルール」を確立

COP30では、ブラジルがEUや中国、英国の支援を得てグローバルな炭素市場を繋ぐ提携を発表するなど、国際的なカーボン市場拡大に向けた動きが活発化している。

ACCFは、パイロットプロジェクトによる明確な地域的防護策(地域ルール)の確立と、より強力な投資シグナルの発信を通じて、地域全体での高信頼性な炭素除去(CDR)プロジェクトへの資金流入を促進し、今後の進捗を測る指標とする。

参考:https://www.bangchak.co.th/en/newsroom/bangchak-news/1765/asean-common-carbon-framework-accf-reports-one-year-progress-at-cop30