バイデン政権のクリーンエネルギー税制が連邦予算案で縮小の危機に
米国のクリーンエネルギー業界団体Advanced Energy United(AEU)は5月、連邦予算案により削減が検討されている主要なクリーンエネルギー税制の意義を訴える広告キャンペーンを開始した。AEUのヘザー・オニールCEOは「これらの税制が雇用創出や経済成長、米国のエネルギー競争力維持に不可欠である」と訴えている。
同キャンペーンは、バイデン政権の「インフレ抑制法(IRA)」に盛り込まれた風力・太陽光・水素などに関する税制優遇措置が、下院歳入委員会の予算案で段階的廃止の対象となっていることを受けたもの。広告は全米5州の特定選挙区を対象に展開され、各地区がIRAによりどれだけの民間投資や製造業の恩恵を受けたかを明示する。キャンペーンの規模は約1,500万円以上とされ、5月26日までの法案採決に向けて続けられる予定だ。
AEUは、税制撤廃により製造業の国内投資が打撃を受け、雇用喪失や生産の海外移転につながると警鐘を鳴らす。一方で、共和党主導の選挙区や州でもIRAにより新規雇用の58%が創出されたとのデータも示されており、与野党間の意見対立が続いている。
水素業界からも強い反発の声が上がっており、数十人のロビイストが議会に対し、2026年までに期限を短縮される見通しの「45V税控除」の存続を求めた。この制度は、水素プロジェクトを通じて年間6万人の雇用と約1兆8,600億円(120億ドル)のGDPを支える可能性があるとされている。
また、太陽光業界団体SEIAのアビゲイル・ホッパー会長も、住宅向け太陽光税控除の年内廃止に対する懸念を表明し、関連企業に議会への働きかけを促した。
この税制論争は、気候変動対策と国内産業の競争力を巡る、米国のエネルギー政策の岐路を象徴している。