産業脱炭素化の急先鋒「ABB」 独自のCCUS計測システムを市場投入

村山 大翔

村山 大翔

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スイスのエンジニアリング大手ABB(エービービー)は2026年2月18日、炭素回収・利用・貯留(CCUS)に特化した初の完全統合型ガス分析パッケージを発表した。

本システムは、CO2の回収から圧縮、輸送、貯留に至るバリューチェーン全体で、微量な不純物をリアルタイムに連続監視するものである。CCUSプロジェクトが実証段階から商業規模へと移行する中で、最大の懸念事項となっていた「CO2の品質管理とパイプラインの安全性確保」をワンストップで解決することを目指す。

不純物混入による腐食と法的ペナルティを回避

CCUSネットワークが拡大し、パイプライン運用者が厳格な仕様を導入する中、CO2の純度維持は事業の成否を分ける重要課題となっている。硫化水素、水分、酸素、不活性ガスなどの不純物がわずかでも混入すれば、配管の腐食リスクが高まるだけでなく、ガスの圧縮特性に悪影響を及ぼす。

基準を満たさないCO2ストリームは、共有の輸送・貯留インフラから遮断されるリスクがあり、その場合、事業者は回収したCO2を大気中へ放出(ベント)せざるを得なくなる。これは排出削減目標の未達を招くだけでなく、多額の炭素税や罰金の支払いといった財務的損失に直結する。

3つの基幹技術を統合した「ターンキー・ソリューション」

ABBの新しいパッケージは、モジュール式の分析シェルターに以下の3つの実証済み技術を統合している。

  • Sensi+ CCUS
    レーザー技術により、干渉を最小限に抑えつつ致命的な汚染物質を迅速に検出。
  • GCP100
    プロセスガスクロマトグラフ。赤外線に反応しないガスの高度な分析を行い、サイバーセキュリティ機能も備える。
  • ACF5000 CCUS
    30年以上の実績を持つFTIR(フーリエ変換赤外分光)技術を活用し、広範囲の成分を測定。

これらを1つのパッケージとして提供することで、個別の機器調達や複雑なエンジニアリング工程を簡素化し、プロジェクト期間の短縮と導入リスクの低減を実現する。

11万人の知見を結集し、ハード・トゥ・アベート産業を支援

世界140年の歴史と約11万人の従業員を抱えるABBは、本システムをセメント、廃棄物発電、石油精製、バイオエネルギー、LNG、化学といった「ハード・トゥ・アベート(削減困難)」なセクターに展開する。

さらに、AIを活用したデバイス診断ツールや、デジタルツイン技術を用いたプラットフォーム「CCS 360」と連携させることで、CCUSネットワーク全体のライフサイクルを最適化する。投資規模が100億ドル(約1.5兆円)を超えるような大規模な炭素除去プロジェクトにおいて、計測とコンプライアンスの自動化は、プロジェクトのバンカビリティを高める不可欠な要素となっている。

CCUSは「捕集」の議論から「輸送・貯留」というインフラ運用のフェーズへ移った。不純物管理の失敗は、カーボンクレジットの無効化やインフラ損傷という致命的なリスクを伴う。日本企業にとっても、アジア圏でのCCS事業展開において、こうした国際基準の計測技術を導入することは、カーボンクレジットの信頼性担保と事業継続性の観点から必須の戦略となるだろう。

参考:https://new.abb.com/news/detail/133550/abb-launches-integrated-carbon-capture-measurement-solution-to-accelerate-industrial-decarbonization