灼熱のリヤドでCO2除去 産油大国のサウジでクライムワークスの最新DAC技術が初稼働

村山 大翔

村山 大翔

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7月27日、サウジアラビアの首都リヤドにある研究施設カプサーク(KAPSARC)で、スイスのクライメートテック、クライムワークス(Climeworks)が開発した「空気中のCO2を直接回収する装置(DAC)」の実証運転が始まった。サウジ政府はこの技術を、2035年までに年間4,400万トンのCO2を回収・再利用するという国家目標の一部と位置づけている。

今回の装置は、2024年に開かれた「サウジ・グリーン・イニシアティブ・フォーラム」で交わされた覚書に基づき設置されたもの。リヤドのように気温が非常に高く乾燥した環境で、DAC技術がきちんと機能するかを確かめるのが目的だ。

クライムワークスは、これまでアイスランドなど冷涼な地域でDAC装置を運用してきたが、高温地域での実証は今回が初めてとなる。うまくいけば、中東やアフリカなど他の暑い地域への展開も視野に入る。

設置場所となったカプサークは、サウジ政府が運営するエネルギー政策の研究機関で、炭素回収や気候対策の拠点として知られている。今回のプロジェクトでは、カプサークが技術検証とデータ分析を担う。

実証運転の開始には、サウジのエネルギー相アブドルアジズ・ビン・サルマン王子も出席。王子は「このプロジェクトは、サウジが掲げる『循環型カーボン経済』を実現するための大きな一歩だ」と述べた。

サウジアラビアは、東部と西部の工業地帯に「CO2の回収・利用・貯留(CCUS)」の大規模拠点を建設する計画を進めており、DACはその柱のひとつとされる。将来的には、回収したCO2をセメントや燃料などの高付加価値製品に活用する方針だ。

また、今回の実証は単なる技術試験にとどまらず、関連部品の国産化やサプライチェーン構築の可能性も探る。豊富な太陽光エネルギーや既存のインフラを活用することで、DACの量産・低コスト化を目指す。

サウジはこの技術を「次世代の産業」として位置づけ、脱炭素と経済多角化の両立を狙っている。

参考:https://climeworks.com/news/saudi-minister-of-energy-inaugurates-first-dac-unit-in-riyadh