米資産運用大手ブラックロック(BlackRock)の傘下であるグローバル・インフラストラクチャー・パートナーズ(GIP)が、イタリアのエネルギー大手エニ(eni)の炭素回収事業に約12億ドル(約1,900億円)を投じる方針だ。エニの炭素回収・利用・貯留(CCUS)事業の49.99%を取得する内容だ。
今回の取引は、世界最大の資産運用会社によるCCUS分野への大規模な投資であり、業界全体への信頼表明とみられている。これまで「高コストで実績が少ない」と敬遠されがちだったCCUS分野にとって、転機となる可能性がある。
エニは5月、GIPとこの事業の売却に向けた独占交渉を開始している。対象は、英国の「HyNet North West」と「Bacton Thames NetZero」(2030年までに年間1,000万トンのCO2貯留目標)、オランダの「L10CCS」(年間500万トン目標)など、欧州主要プロジェクトの株式。将来的には、イタリアのラヴェンナでも年間400万トン規模の貯留を計画している。
エニはこれまでも再生可能エネルギー部門の株式を外部に売却しており、今回のCCUS売却も「成長分野への資本呼び込み戦略」の一環だ。クラウディオ・デスカルツィCEOは「低炭素事業の成長に向けた新たな資本を歓迎する」と述べている。
ブラックロックは2024年末にGIPを買収しており、インフラ投資を通じて脱炭素化を推進している。今回の取引が成立すれば、欧州最大規模の民間CCUS投資となる見込みだ。炭素価格が上昇する欧州で、今後も同様の投資案件が増えると期待されている。