「価格がすべてを決める時代」へ 米新法でDAC支援継続、他の脱炭素技術に陰り

村山 大翔

村山 大翔

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米国の「The One Big Beautiful Bill」について報道ではクリーンエネルギー支援の削減が大きく取り上げられ「脱・脱炭素」と批判が上がっていたが、直接空気回収(DAC)をはじめとする炭素回収・貯留(CCS)に関しては支援が維持・強化の方向性が示された。1トンあたり最大180ドル(約28,800円)の税控除が今後も適用される形だ。

新法案では、CO2を地下に貯留するDAC施設は、引き続き1トンあたり180ドル(約28,800円)の45Q税額控除を受けられる。さらに、燃料製造や石油回収などでCO2を利用する場合の税額控除は従来の130ドルから180ドルに増額された。

一方、合成燃料(e-fuels)に必要なグリーン水素への支援が削減されたことで、e-ケロシンのCO2削減コストはトンあたり約1,000ドル(約16万円)に達すると見込まれ、DACの2030年目標コスト250ドル(約4万円)に比べ、大きな差が生じている。つまり、45Qが維持される一方で、他の技術への支援が減ることで、投資資金がDACに集まりやすくなる。

現在、多くのDAC開発企業が初期段階では1トンあたり約500ドル(約8万円)のコストを提示しており、2030年までに250ドルを目指している。DAC装置は、送風機を取り除いたり、低温の廃熱で再生できる吸着剤に切り替えたりすることで、コスト削減が進むとされており、技術の簡素化が鍵となる。

法案の他の条項では、フロンガス(HFC)の規制費用(Sec.60008)、連邦建物の低炭素資材導入費(Sec.60021)、建設資材の温室効果ガス削減助成(Sec.60024)などが削除された。一方で、CO2を石油回収や化学変換に使った場合の税控除(Sec.70522)は17ドル(約2,700円)に引き上げられた。

風力発電などのクリーンエネルギーへの規制は撤廃する一方で、DACをはじめとするCCSには積極的な姿勢を見せるトランプ政権の方向性はある意味で一貫していると言えるだろう。

参考:https://www.congress.gov/bill/119th-congress/house-bill/1