英海運カーボンキャプチャーのSeabound、初の商用フルスケール船上CCSシステムを完成 欧州宇宙機関から2.7億円の資金も獲得

村山 大翔

村山 大翔

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パイロットから商用展開へ、セメント運搬船に初搭載

英スタートアップのシーバウンド(Seabound)は、ドンカスターの研究開発拠点において、初の商用フルスケール船上炭素回収・貯留(CCS)システムの組み立て・検証を完了した。同システムは陸上ディーゼル発電機を用いた試験を経て、セメント運搬船「UBC Cork」(総トン数5,700トン、Hartmann Group所有)への搭載が予定されている。

同船はインターマリティム・シップマネジメント(InterMaritime Shipmanagement)が管理し、世界的セメント大手のハイデルベルク・マテリアルズHeidelberg Materials)がチャーターしている。

ハイデルベルクのラース・エリック・マークセン氏(北欧物流プロジェクトマネージャー)は、同システムによりこれまで削減が困難だったScope3排出量への対応が可能になると述べ、ネットゼロ・コンクリート製品の実現に一歩近づくとの認識を示した。

欧州宇宙機関・ティッセンクルップとの提携

シーバウンドは今回、欧州宇宙機関(ESA)から150万ユーロ(約2億7,500万円)の資金を獲得し、商用展開の加速に向けた支援を受ける。ESAの「Business Applications and Space Solutions」プログラムを通じたもので、衛星データと海運産業の接点を活かした協業となる。

加えて、ティッセンクルップ・ポリシウスthyssenkrupp Polysius)との技術提携も発表された。同提携ではグリーン生石灰の製造に取り組み、船上でのネットポジティブな炭素回収経路の実現を目指す。これは回収したCO2を石灰製造プロセスに活用する構想であり、実現すれば海運における炭素回収・利用(CCUの新たなモデルとなり得る。

モジュラー型「Seabound Containers」の技術概要

シーバウンドが開発した「Seabound Containers」は、20フィートコンテナサイズのモジュラー型船上炭素回収システムである。船舶エンジンの排気ガスからCO2を捕集するほか、硫黄酸化物(SOx)も除去するため、強化される環境規制への対応と燃料コスト削減の双方に寄与する。

今回のイベントでは第2世代システムも公開された。顧客からのフィードバックを反映し、船上での水平配置に対応するとともに、回収効率と量産性が改善されている。

企業概要と資金調達

シーバウンドは2021年後半に設立され、これまでにエクイティとグラント資金を合わせ850万ポンド超(約17億9,000万円)を調達している。投資家にはLowercarbon Capital、Y Combinator、Eastern Pacific Shipping、Elemental Impact、Collaborative Fundが名を連ねる。

英国政府のClean Maritime Demonstration Competition(CMDC)で2度の採択を受けており、ドンカスターの研究開発拠点「Seabound North」も同競争の2025年ラウンドで助成を受けた。なお、CMDCを運営する英国政府のUK SHOREプログラムは2022年以降、2億3,000万ポンド超(約483億円)を247以上のプロジェクトに配分し、1億700万ポンド超(約225億円)の民間投資を呼び込んでいる。

同社の長期目標は、2040年までに年間1億トンのCO2回収を達成することであり、これは世界の海運排出量の約10%に相当する。

海運は世界の温室効果ガス(GHG)排出量の約3%を占め、脱炭素の「最後の砦」とも称されるセクターである。日本はIMO規制強化の直接的な影響を受ける海運大国であり、邦船大手(日本郵船、商船三井、川崎汽船)にとって、船上CCSはLNG燃料転換やアンモニア燃料と並ぶ現実的な移行オプションとして注視すべき技術である。

特にシーバウンドのモジュラー型アプローチは既存船舶への後付けを前提としており、新造船投資を待たずに排出削減を開始できる点で、GX-ETSにおけるScope1対応やCORSIA Phase-1へのコンプライアンスを検討する日本の荷主・船主双方にとって実務的な選択肢となり得る。

回収CO2の利活用先(セメント原料としての石灰製造)まで一貫した経路を示している点も、炭素回収・利用・貯留(CCUS)バリューチェーン構築を模索する日本企業にとって示唆に富む事例である。

参考:https://www.seabound.co/news/seabound-celebrates-completion-of-first-full-scale-maritime-carbon-capture