世界最大のカーボンクレジット基準機関のVerraと、商品市場の情報提供大手S&Pグローバル・コモディティ・インサイツ(S&P Global Commodity Insights)は8月21日、カーボンクレジット市場の透明性と効率性を高める「次世代レジストリ」の共同開発に着手すると発表した。両者の協力は、市場の統合とデジタル化を推進し、スケーラブルかつ信頼性の高いインフラ整備につながる画期的な取り組みとなる。
新レジストリは、S&Pが提供する「Environmental Registry」基盤を活用し、炭素クレジットの発行から移転・償却までの全ライフサイクルを追跡可能にする。プロジェクトの検証書類を一元化し、取引履歴を透明化することで、企業や投資家にとって信用性の高い市場環境を実現する狙いだ。
Verraの最高経営責任者マンディ・ランバロス氏は「これは技術的かつ戦略的な変革だ。レジストリは市場の背骨であり、その基盤は高い信頼性と拡張性、複雑なデジタル要件に対応できなければならない。S&Pとの提携により、それを確実に実現できる」と述べた。
S&P側も、この提携がエネルギー移行と気候目標の推進に直結すると強調した。同社のエネルギー移行・サステナビリティ部門責任者リアン・トッド氏は「統合レジストリは市場参加者に透明性、信頼性、効率的なクレジット追跡を提供する。これが炭素市場の拡大と温室効果ガス削減の強力なインセンティブとなる」と語った。
新システムは2段階で導入され、基盤部分は6カ月以内に稼働を開始し、2026年に第2段階が展開される予定である。具体的には、プロジェクト文書の作成から発行までを効率化する「Verra Project Hub」との双方向連携、開発者の事務負担削減、検証・発行期間の短縮、APIによる自動化された取引・償却処理などが盛り込まれる。既存の取引基盤であるCBLやXpansiv Connectとも接続され、利用者への影響を最小化する。
さらに、今後は国際航空の排出削減制度「CORSIA」やパリ協定第6条に基づく国際取引制度との統合も視野に入れており、各国政府や金融機関を含む幅広いプレーヤーが利用できる基盤となる見通しだ。
ベラは9月に詳細な移行スケジュールや新システムの利用手順を発表し、ユーザー向けのサポートと研修を提供する。今後の展開は、日本企業を含むグローバル市場参加者にとって、カーボンクレジット調達・活用戦略の精度を高める重要な節目となる。