鉄鋼脱炭素化へ、バイオ炭商用生産を加速 豪政府が約4.7億円の助成金でCO2除去を推進

村山 大翔

村山 大翔

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オーストラリア再生可能エネルギー庁(ARENA)は2026年2月、鉄鋼生産プロセスにおける化石燃料の代替を目的として、同国初となる商用規模のバイオ炭プロジェクトに対して480万豪ドル(約4億7,000万円)の助成金を交付すると発表した。

ニューサウスウェールズ州ブラーデラを拠点とするバイオカーボン(BioCarbon)社が主導する本プロジェクトは、廃棄バイオマスから再生可能な炭素を生成し、炭素除去(CDR)と重工業の脱炭素化を同時に推進するものである。

今回の投資を受けるバイオカーボン社は、独自の熱分解技術を商用規模へと拡大し、年間2万トンの廃棄木材チップを約8,000トンの高品質なグリーンチャー(GreenChar)に変換する。この再生可能炭素は、電気炉(EAF)での化石コークス代替や、高炉での還元剤としての活用が想定されている。

鉄鋼生産は世界の温室効果ガス排出量の約7%を占める難削減(ハード・トゥ・アベート)セクターであり、今回の取り組みはグローバルな排出削減において戦略的な重要性を持つ。プロジェクトは製材所の残渣や自生林の副産物を対象としており、低価値の廃棄物を高価値な産業用還元剤へと転換する。

商用化に先立ち、オーストラリア再生可能エネルギー庁(ARENA)は、ブルースコープ・スチール社(BlueScope Steel Limited)がポートケンブラ製鉄所で実施した試験を支援してきた。2023年に実施された試験では、高炉への微粉炭吹き込み(PCI)の最大30%をバイオ炭と石炭の混合物で代替することに成功している。

また、既存の鉄鋼生産インフラへのバイオ炭および水素リッチガスの投入を最適化するため、ウロンゴン大学(University of Wollongong)やニューサウスウェールズ大学(UNSW)のシェン研究室(Shen Lab)に対しても、別途資金が提供されている。

オーストラリア再生可能エネルギー庁(ARENA)の最高経営責任者(CEO)であるダレン・ミラー氏は「バイオ炭の活用は、既存の鉄鋼設備を大幅に改造することなく、即時かつ実質的な排出削減を可能にする鍵となる」と指摘した。

今後は、本プラントの稼働開始と、鉄鋼大手によるバイオ炭の本格採用に向けた実証結果が注目される。

本件は、単なる「鉄鋼の脱炭素化」という文脈を超え、炭素除去(CDR)市場におけるバイオ炭のプレゼンスを決定づける動きといえる。

これまでバイオ炭は農業利用による炭素貯留が主戦場でしたが、鉄鋼という巨大産業のサプライチェーンに組み込まれることで、供給量のスケールアップとカーボンクレジットの質の向上が同時に見込めます。

日本においても、日本製鉄などの大手がバイオ炭活用を模索していますが、豪州のように政府が商用プラント建設を直接支援するスピード感は、今後の国際的なカーボンクレジット獲得競争において大きな差を生む可能性があります。

バイオ炭が「農地への散布」から「産業の基幹原料」へと昇格するこの流れは、カーボンクレジット創出の安定性を高める好材料となるでしょう。

参考:https://arena.gov.au/projects/biochar-production-for-steelmaking/