英国政府は2026年2月6日、同国最大級の脱炭素インフラ「イースト・コースト・クラスター(East Coast Cluster)」のティーサイド・ネットワークに接続を希望する、二酸化炭素回収・利用・貯留(CCUS)プロジェクトの新たな公募ラウンドを開始した。
エネルギー・セキュリティ・ネットゼロ省(DESNZ)は、2032年までの稼働を目指す事業者を対象に、北海南部にあるエンデュランス(Endurance)貯留層の残存容量を活用するプロジェクトを募集する。関心表明書の提出期限は3月10日となっており、選定された事業者は産業部門の排出削減と高度な雇用維持の柱として、政府の強力な支援を受ける見通しだ。
今回の公募は、英国が掲げる産業脱炭素化の規模拡大に向けた重要な一歩となる。
炭素回収貯留協会(CCSA)のオリビア・パウィス最高経営責任者(CEO)は、「大規模なCCUSセクターの完全運用に向けた主要な節目である」と評価した。
特に注目すべきは、政府支援をほとんど必要としない自立型プロジェクトにも門戸を開く「移行期アクセス合意(Transition Access Agreement)」の導入であり、これによりCCUSが従来の政府主導モデルから、より市場主導の商業モデルへと移行し始めていることを示唆している。
さらに政府は、パイプライン以外の輸送手段(道路、鉄道、船舶)に関するパブリックコンサルテーションの結果も同時に公開した。これは、既存のパイプライン網から離れた場所に位置する排出源からもCO2を回収し、沖合の貯留層へ運ぶための道筋を整える狙いがある。しかし、現時点の公募プロセスでは、これら非パイプライン輸送に依存するプロジェクトはまだ申請対象外となっており、早期のインフラ整備を求める業界団体からは、代替輸送ルートの早急な有効化を求める声も上がっている。
イースト・コースト・クラスターの開発は、英ビーピー(bp)、ノルウェーのエクイノール(Equinor)、仏トタルエナジーズ(TotalEnergies)の合弁事業であるノーザン・エンデュランス・パートナーシップ(Northern Endurance Partnership)が主導している。このインフラは、ティーサイドおよびハンバー地域の産業拠点から回収されたCO2を、海底のエンデュランス帯水層へ輸送・貯留する役割を担う。今後は3月10日の関心表明を経て、4月には詳細な申請手続きが開始される予定だ。
今回の発表は、英国がCCUSを単なる「補助金事業」から「持続可能なビジネスモデル」へと進化させようとする強い意志の表れだ。
特に、政府支援に頼らないプロジェクトへの門戸開放は、カーボンクレジット市場において高品質なCDRクレジットの供給を安定させるための重要な布石となる。
日本企業にとっても、北海という巨大な貯留ポテンシャルを活用したビジネスや、船舶輸送による広域的なCCUSネットワークの構築は、将来の炭素除去(CDR)戦略を考える上で避けて通れないベンチマークとなるだろう。
参考:https://www.gov.uk/government/publications/ccus-east-coast-cluster-updated-selection-process#full-publication-update-history
