米Mast Reforestationが世界初の「埋設型CDR」クレジットを販売 カナダ王立銀行らへ納入

村山 大翔

村山 大翔

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米国シアトルに拠点を置くマスト・リフォレステーション(Mast Reforestation)は2026年1月29日、モンタナ州南部で展開する森林復旧プロジェクト「マスト・ウッド・プリザーブ MT1(Mast Wood Preserve MT1)」から、バイオマス埋設による炭素除去(CDR)クレジットの初回発行分の8割以上を販売・納入したと発表した。

本件は、火災跡地の復旧資金をCDRクレジットの売却益で賄う世界初のモデルであり、購入者にはカナダ王立銀行(RBC)や炭素ポートフォリオ提供のシーノート(CNaught)、ミュアAI(Muir AI)などが名を連ねている。

今回の発行は、CDRクレジットの認証機関であるプロ・アース(Puro.earth)のバイオマス地上貯蔵(Terrestrial Storage of Biomass)手法に基づく過去最大規模の案件となった。第三者機関による検証を経て、4,277トンのCDRクレジットが認証された。

本プロジェクトでは、2021年の「ポバティ・フラッツ火災」で焼失した1,000万ポンド(約4,536トン)以上の樹木を、長期貯蔵用に設計された地下空間に埋設した。これにより、通常であれば焼却処分され大量のCO2を放出するはずのバイオマスを、少なくとも100年間にわたり大気循環から隔離する

クレジットの売却益は、モンタナ州ビッグホーン郡の埋設地周辺における再植林事業に直接充てられる

同地域は火災被害が激しく、自然回復には1世紀以上を要するとされていたが、マスト社は2026年春から現地の種子から育てた苗木による再植林を開始する。このモデルは、深刻な森林火災後の生態系回復に必要な資金を、民間主導の炭素市場から調達する革新的な手法として注目されている。また、プロジェクトは当該地域の農村部へ100万ドル(約1億5,000万円)以上の経済効果をもたらした。

カナダ王立銀行(RBC)の気候オペレーション部門責任者であるジョン・ダグラス氏は「革新的なソリューションを通じて気候回復力の向上を支援することに注力しており、今回のバイオマス埋設クレジットの購入もその戦略の一環だ」と述べた。また、シーノート(CNaught)のマーク・チェン最高経営責任者(CEO)は「MT1のような耐久性の高い除去クレジットは、従来の選択肢以外の多様化を求める買い手にとって、極めて重要なギャップを埋めるものだ」と指摘した。

格付け大手のビゼロ・カーボン(BeZero Carbon)は、本プロジェクトに対し、発行前格付けとして「Apre」を付与した。これは実行リスクが低いことを示し、世界の非自然由来プロジェクトの上位8パーセントに相当する高評価である。マストのグラント・カナリー最高経営責任者(CEO)は、今後プロジェクトを1件あたり2万トン規模へ拡大し、モンタナ州内だけでも280万トンの焼失樹木が存在すると試算した上で、年間15万トンの供給体制を構築する意向を示した。

マストは、カリフォルニア州やオレゴン州でも数千エーカーの森林復元実績があり、傘下の苗木園では年間平均3,600万本の苗木を生産している。

今回の成功をモデルケースに、2026年内にはさらに数万トン規模の埋設プロジェクトを拡大させる計画だ。バイオマス炭素除去貯蔵(BiCRS)アプローチと森林再生を組み合わせたこの事業は、ボランタリーカーボンクレジット市場における新たな信頼性の基準となることが期待されている。

今回のニュースは、従来の「森林クレジット(NBS)」が抱えていた「火災による消失リスク」という弱点を、逆転の発想で解決した点に大きな意義がある。焼けた木を「埋める(CDR)」ことで確実に炭素を固定し、その利益で「植える(再植林)」というハイブリッドモデルは、クレジットの耐久性と生態系回復を両立させている。

参考:https://www.prnewswire.com/news-releases/mast-reforestation-sells-and-delivers-market-first-biomass-burial-credits-to-royal-bank-of-canada-cnaught-and-others-302673476.html#:~:text=SEATTLE%2C%20Jan.%2029%2C%202026,engineered%20for%20long%2Dterm%20storage.